個人も企業も大混乱! インボイス&改正電帳法の落とし穴 #3Photo by Akio Fujita

インボイス制度の導入により、売上高1000万円以下の零細事業者が享受してきた消費税の「益税」が消滅するだけでなく、納税義務が課される。コロナ禍の影響により収入は減少傾向にあり、さらに大打撃を受けることになるわけだ。加えて、納税に関する事務負担も増えるため、廃業を考える零細事業者が続々と現れている。特集『個人も企業も大混乱! インボイス&改正電帳法の落とし穴』(全15回)の#3では、インボイス導入の影響が大きい零細事業者の声をお届けする。(ダイヤモンド編集部編集委員 藤田章夫)

4人に1人が廃業を検討!
声優などエンタメ4団体の悲鳴

 およそ4人に1人が廃業を検討している――。驚愕の事実が明らかになった。下図は、昨年秋に声優やアニメ、漫画、演劇といったエンターテインメント業界4団体が、関係者たちにインボイスの影響について尋ねたアンケートの結果だ。

 これらエンタメ業界には、フリーランスや個人事業主として働く人が多いが、そうした人々に多大な影響を及ぼすのが、2023年10月1日から導入されるインボイス制度だ。

 インボイスとは、正式名称を適格請求書等保存方式といい、消費税率や消費税額を明記した請求書や領収書の保存が必要になる。この制度が導入されると、これまでとは消費税の扱いが大きく変わることになる。

 現在、売上高1000万円以下の零細事業者は、商品を販売したりサービスを提供したりして受け取った消費税を、納税する義務はない。いわゆる免税事業者であり、受け取った消費税は収入になっているわけだ。これを「益税」というが、零細事業者は収入が少ない上に立場は弱く、価格決定権もないための優遇措置だ。

 ところが今年10月以降、インボイス制度が導入されると、これら零細事業者に悲劇が襲い掛かる。それはエンタメ関係者だけではなく、個人タクシーの運転手やビルの清掃人、シルバー人材センターで働くシルバー人材など、全国に1000万人以上いるとされる零細事業者やフリーランスの多くが対象となる。

 次ページでは、それら零細事業者に襲い掛かる悲劇について詳述していこう。