また、2012年9月には当時の野田政権が尖閣諸島の国有化を宣言したが、その後中国メディアが一斉に対日批判を展開し、中国各地では反日デモが拡大し、パナソニックの工場やトヨタの販売店などが放火され、日系のスーパーや百貨店などが破壊や略奪の被害に遭った。また、中国政府は日本からの輸入品の通関を厳格化させ、遅滞させるなどした。
今後も、過去のような対抗措置が取られる可能性は十分にあろう。今回、ビザ発給停止の原因は水際対策強化とされているが、昨今、米国は対中半導体輸出規制で日本に同調するよう求めているが、中国としては日米を切り離したい狙いもあり、ビザ発給停止という行動によって日本を政治的に揺さぶり、その後の日本の姿勢を見る狙いもあることだろう。
そして、企業にとって懸念されるのが、どのような対抗措置が取られるか、どの業界に影響が大きく及ぶか全く読めないところだ。今後の行方にもよるが、仮に摩擦が大きくなれば、日本が中国に多くを依存する資源や品目、中国以外に代替先確保が難しい資源や品目(ノートパソコン、タブレット端末、携帯電話、コンピューター関連の部品など)を中心に、突然の輸出停止、制限などが課される可能性もある。
大手メーカーで広がる
「脱中国」の動き
内閣府によると、今日の日本が輸入する品目のうち、実に1000以上の品目で輸入額に占める中国の割合が50%を超えているという。仮に、上述のような品目で中国からの輸入が滞るようなことがあれば、中国からの部品に依存している製造業を中心に経済活動が停滞する可能性がある。
こういったリスクを懸念してか、たとえば、大手自動車メーカーのマツダは昨年8月、部品の対中依存度を下げる方針を明らかにした。トヨタも昨年5月、上海からの部品調達が滞ったとして、国内の一部の工場の稼働を停止した(その原因はゼロコロナであったが)。ホンダも昨年8月、国際的な部品のサプライチェーンを再編し、中国とその他地域のデカップリング(切り離し)を進める方針を明らかにした。
さらに、キヤノンの御手洗冨士夫会長兼社長も昨年10月、経済活動が影響を受ける国々に生産拠点を維持できず、安全な第三国への移転か、日本に戻すかの二つの道しかないという認識を示し、工場の展開などを時代に見合った体制に見直すべきだとして、主要な工場を日本に回帰させる考えを示した。