中国全人代の常務委員会は2021年6月、ウイグル人権問題などを理由に米国が中国に制裁を発動する中、外国が中国に経済制裁などを発動した際に報復することを可能にする反外国制裁法を可決した。日本企業との間で反外国制裁法が懸念されるのは、同法が“外国による制裁に第三国も加担すれば第三国にも報復措置を取れる”と明記している点で、今後の米中対立や台湾情勢の行方が懸念されるなか、“日本の第三国化”が心配される。

 こういった潜在的リスクがある中、企業はどう行動すべきだろうか。

日本企業はグローバルサウスに
経済フロンティアを開拓すべきだ

 一つに、こういった潜在的リスクを抱えている国は日本だけではない。中国は関係が悪化する台湾に対して、台湾産のフルーツや高級魚のハタ、ビールなどの輸入を突如停止し、同様に新型コロナの真相究明や人権問題などを巡って関係が悪化するオーストラリアに対しては、オーストラリア産ワインや牛肉などの輸入を禁止したり、高い関税をかけるなどした。

 しかし、その影響を受けた台湾やオーストラリアの企業の中には第三国への輸出強化で被害を回避したケースも見られ、日本の企業としては、こういった経済攻撃を受けた台湾やオーストラリアの企業がどのように対応したかを参考にし、また取り組みなどで関係を強化することも必要だろう。

 また、日本の企業はグローバルサウス(南半球を中心とする途上国)にこれまで以上に焦点を当て、新たな経済フロンティアを開拓する必要があろう。ウクライナや台湾など日本の関心は大国間対立に集中しているが、ASEANや南アジア、中東やアフリカ、中南米や南太平洋などグローバルサウスの国々には米中対立などに強い不満を抱き、それとは一線を引く国が少なくない。

 そして、今後世界で人口が大幅に増加する中、グローバルサウスの影響力はいっそう高まることが予想される。日本としては政府だけでなく、日本企業も率先してグローバルサウスとの関係をよりいっそう重点化する必要があろう。

 依然として、日本にとって最大の貿易相手国は中国であり、完全な脱中国は現実的にあり得ない。しかし、日中関係に潜む今後のリスクを考え、代替できる部分、シフトできる部分については脱中国、グローバルサウスへの接近を図ることが求められよう。

(オオコシセキュリティコンサルタンツ アドバイザー/清和大学講師〈非常勤〉 和田大樹)