節約の目安として、年間赤字額を従来比3割減の126万円に抑えたとしても、それでも約23.7年後(Xさんが73歳になる前)には金融資産を使い切ってしまいます。抜本的に家計を見直さないと、人生100年時代には対応できないことが分かります。

 Xさんは相談文に「あと何年働き続ければよいのでしょうか?」とも書かれていますが、すぐに仕事を辞めてしまうと、金融資産が底を突く年齢がさらに早まるでしょう。

 Xさんは老後に備えてドル建ての年金保険に加入されていますし、一定の年齢になればiDeCoを解約することも確かに可能です。ですが、それらの金額が入ることを考慮しても、赤字額が大きいため、金融資産が底を突く期間を数年延ばすことができる程度と考えられます。

 このため、1日でも早く家計支出の見直しを行うべきです。

まずは投資を除いた年間収支を
「トントン」にしてみては

 家計が黒字にならなくてもいいので、仕事の後輩へのごちそうや旅行を減らすなど、赤字額をなくして年間収支をトントン(プラスマイナス0円)にすることを目指すのはどうでしょうか。

 そこで、ここからの試算では、先ほど年間126万円とした赤字を解消して、投資を除いた年間収支をトントンに改善した前提で、老後の家計を試算していきます。今回は文字数の関係上、実際にどの項目をいくら減額するかはXさん自身が優先順位を付けて決めてみてください。

 では、家計収支がトントンのまま、Xさんは現在の49歳から65歳まで働いたとしましょう。

 労働で得る収入は支出と相殺されますが、iDeCoに月2万3000円、年間27万6000円を拠出していることから、Xさんが65歳まで働いた場合は441万6000円(27万6000円×16年間)が金融資産額にプラスされます。

 娘さんに支援する金額を差し引いた金融資産額は2985万円ですから、iDeCoのプラス分を加えると3426万6000円になります。これが、Xさんが65歳時点での金融資産です。株価の行方は分かりませんので、評価額は変わらないという前提で厳しめに試算しました。

 Xさんが65歳で仕事を辞めた場合、その後の年収は、公的年金が月11万円(年間132万円)、ドル建ての年金保険が月12万円(年間144万円)の合計276万円です。

 ただし、これは額面の金額なので、手取り額は250万円とします。