ミドルリーダーの心身を蝕む「不健全な完璧主義」とは

「自分はもっとやれるはずだ」
「なぜ部下はもっとやってくれないのだろう……」
仕事をしているとついつい心に浮かんでしまうこうした「ネガティブな言葉」。こうした言葉の裏側には、自分や他人に完璧であることを期待してしまう「完璧主義」が根っこにあります。
産業医・臨床医・脳画像研究者と複数の顔を持ち、国内外で研究が評価されている青木悠太氏は、そうした「完璧主義」に基づく相談は30代後半から40代のミドルリーダーに多い、と警鐘を鳴らしています。今回は、実は3つの種類があるという完璧主義と、ウェルビーイングの関係について解説していただきました。果たして、ミドルリーダーを蝕んでいる「不健全な完璧主義」の正体とは、何なのでしょうか。

ミドルリーダーが陥る「完璧主義」の罠

 産業医面談をさせていただいていると、年代別で相談内容に特徴があることがわかります。部下の数も増えて仕事ができるようになる30代後半から40代の方から多く受けるご相談には、

「もっとやれたのではないかという思いが強く、感情を処理できない」
「戦力として期待されていることがわかっているが応えきれない自分がもどかしい」
「部下が期待に応えてくれずしんどい」

 といった自分が人に期待していること、自分に期待されていること、自分に対する期待に沿えないといったものが多くあります。

 仕事において完璧を目指す、というのはビジネスパーソンにとって当たり前のことではあります。仕事を工夫して完成度を高めることも、その結果として達成感を味わうことも、ウェルビーイングにとってはいいことです。

 しかし、完璧に仕事をこなそうとしすぎると、上述したような悩みの原因になり、ウェルビーイングを下げてしまいかねません。そこで今回は、完璧主義とウェルビーイングを両立させる方法を探していきます。

完璧主義には3つある!?

 完璧主義には3つの軸があります。

1. 自己志向的完璧主義 (Self-oriented perfectionism: SOP)

 自分にとっての完璧を自分のために自分に課すタイプの完璧主義です。上の相談の1つ目「もっとやれたのではないかという思いが強く、感情を処理できない」はSOP傾向が悩みの原因となっています。

2. 社会規程的完璧主義 (Socially-prescribed perfectionism: SPP)

 完璧な自分でなければ他人から評価されないと考えるタイプの完璧主義です。上の相談の2つ目「戦力として期待されていることがわかっているが応えきれない自分がもどかしい」はSPP傾向から来ている悩みといえます。

3. 他者志向的完璧主義 (Other-oriented perfectionism: OOP)

 自分にとっての完璧を自分のために他人に課すタイプの完璧主義です。上の相談の3つ目「部下が期待に応えてくれずしんどい」はOOP傾向に由来します。