推し活の敵・転売ヤーが「刑務所行き」もあり得るほど罪深い理由写真はイメージです Photo:PIXTA

アイドル、アーティスト、芸人、俳優、アニメのキャラクター…。今、特定の誰かを熱心に応援する“推し活”がブームです。一方、“推し”への愛情が暴走しすぎた人たちによる違法行為や迷惑行為が問題となっている一面も…。自分やわが子が推し活でトラブルに巻き込まれないためには、正しい知識を身に付けることが重要です。本稿は、自身も推し活を楽しむ弁護士たちが、法的観点でまとめた「推し活の指南書」こと、『清く、楽しく、美しい推し活』(東京法令出版)の一部を抜粋・編集したものです。

チケットの不正転売で刑務所行き!?

 国民的アイドルグループの公演をどうしてもいい席で見たい…そう思ったファンが、いくつかの公演のチケットを転売により複数入手。いい席のチケットは自分で使うため、チケット記載の名前の身分証を偽造して入場。余ったチケットは次のコンサートの軍資金のために、他の人に定価を大きく超える価格で転売。しかし、ある日警察がやってきて、裁判にかけられてしまうことに…!?

 2019年6月14日から施行された、話題のチケット不正転売禁止法。

 自分もチケットを友達に譲ったり、SNSやチケットサイトを通じて買ったことがある…と、ドキッとした人も多いのではないでしょうか。

 どうしても行きたいコンサート。大好きなグループを、推しを少しでも近くで見たい。そのためなら多少お金を出してでも…その気持ち、よくわかります。

 そもそもチケットの不正転売等は、どうして法律で禁止されたのでしょうか?

 チケットの不正転売等に潜む問題点を解説します。

不正転売のせいで使いたいところにお金が使えない!

【条文】
特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律(略称:チケット不正転売禁止法)

第3条 何人も、特定興行入場券の不正転売をしてはならない。

第4条 何人も、特定興行入場券の不正転売を目的として、特定興行入場券を譲り受けてはならない。

第9条第1項 第3条又は第4条の規定に違反した者は、1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

 上記のチケット不正転売禁止法の正式名称は「特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律」といいます。このチケット不正転売禁止法が禁止しているのは、次の2つの行為です。

(1)特定興行入場券を不正に転売する行為(第3条)

(2)特定興行入場券の不正転売を目的として、特定興行入場券を譲り受ける行為(第4条)

 そして、これに違反した人に対しては、1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金又はその両方の罰が科されることになっています(第9条第1項)。

 罰金刑ももちろん軽くはないですが、懲役刑、つまり刑務所に入る可能性もあるわけで、チケットの不正転売等に関しては、なかなか重い刑罰が定められているといえるでしょう。

 では、チケットはすべて、人に転売してはいけないのでしょうか? どんな行為がアウトなのか、具体的に見ていきます。