自民党が、児童手当の所得制限撤廃へ方針転換しようとしているのは大いに歓迎すべきことだ。所得制限がなぜダメなのかを説明するとともに、この一件が「ベーシックインカム」の実現に向かう道への扉を一つ開く重要な転換点となり得る理由を説明したい。(経済評論家、楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)
茂木幹事長「反省する」発言の
大きな意義
自由民主党の茂木敏充幹事長は、1月29日にNHK番組「日曜討論」で、岸田文雄首相が進めようとする「異次元の少子化対策」に関連して、児童手当に付されている所得制限を撤廃する方向で党内をまとめるとの意見を披露した。
自民党には、かつて旧民主党政権が所得制限のない「子ども手当」を創設した際、これをバラマキと批判して所得制限付きの児童手当を復活させた経緯がある。番組でこの点との整合性を立憲民主党の岡田克也幹事長に問われると、茂木氏は「反省する。必要な政策の見直しはちゅうちょなく行う」と答えた。
政治家の公の発言で「反省する」は珍しいが、これが国民に好感を持たれるとすると、茂木氏は巧まずして新しい有望な答弁のパターンを開発したことになるのかもしれない。
ただ、現行の児童手当が所得制限付きであることからも分かるとおり、自民党内には「所得制限付き」を支持する声もあり、党内のとりまとめはこれからだ。ただし、政策論として児童手当のような給付金に対しては、「所得制限」を付けないことのメリットは圧倒的だ。コンサルティング会社の出身で「頭のいい」との定評がある茂木氏のことだ。「厳しい財政状況がうんぬん…」といった官僚のレクチャーを聞きかじった程度の意見を軽く蹴散らして、党内を取りまとめてくれるのではないか。