伊藤忠商事の岡藤正広会長Photo by Michio Nakagawa

総合商社各社は2月3日、今年度第3四半期の業績とともに、今年度の連結業績見込みを発表した。資源価格の高騰や円安などの影響もあり、連結純利益で三菱商事が1兆1500億円、三井物産が1兆800億円と、総合商社で初の1兆円台を見込む。さらに伊藤忠商事も8000億円に達する見込みだ。総合商社で空前の好決算が続く中、昨年12月に『伊藤忠 財閥系を超えた最強商人』を上梓した野地秩嘉氏が、伊藤忠商事の岡藤正広会長に、同社の経営戦略や今年の経営環境などについて、話を聞いた。

長く続いた景気拡大は
そろそろ終わるだろう

――2021年3月期の決算で、伊藤忠商事は連結純利益、株価、時価総額で総合商社トップに立ちました。しかし、今年度(23年3月期)は資源価格の高騰などの影響で、連結純利益は財閥系の三菱商事、三井物産に次ぐ3位となる見込みです。2023年の経営環境の見通しやリスクについて、どのように考えていますか。

 中国のコロナ対策がどうなっていくのか、そしてウクライナ問題の行方。この2つが2023年の大きなリスクだと思っています。

 中国は、ゼロコロナ政策が緩和されましたが、その後の状況を見る必要があります。ウクライナに関しては、なかなか終わりが見えません。昨年の年初時点で、昨年2月にロシアがウクライナに侵攻することを予見した人なんて、ひとりもいなかったでしょう。それを考えると、世界の今後について、何ひとつ、わかっていることはありません。しかし、ウクライナの動向によって世界、特にヨーロッパは大きく変わります。

 それと、現在、金融引き締めが世界的に行われています。これが景気を冷ますことになるでしょう。コロナやウクライナの問題が終わるかどうかにかかわらず、長期に続いた景気の拡大が、そろそろ終わろうとしているのだと思います。

 ただし、あまりにも金融を引き締めてしまうと景気が過度に悪化する「オーバーキル」のリスクを意識して、景気を戻そうとする揺り戻しの動きが出てくる。おそらく今年下期は多少、金融緩和の動きがある気がします。

 とはいえ、基本的に今までのような良い時代ではないと思います。本来であれば、もっと早く景気が冷めていたはずなんです。