新型コロナウイルス禍に円安、資源・原材料の高騰、半導体不足など、日本企業にいくつもの試練が今もなお襲いかかっている。その中で企業によって業績の明暗が分かれているが、格差の要因は何なのか。上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)
日本電産が売上高・最終利益で
「過去最高」更新も下方修正
企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下の電子部品業界5社。対象期間は2022年8~12月の四半期としている(5社とも22年10~12月期)。
各社の増収率は以下の通りだった。
・日本電産
増収率:14.6%(四半期の売上高5690億円)
・村田製作所
増収率:マイナス11.1%(四半期の売上高4190億円)
・京セラ
増収率:7.3%(四半期の売上高5143億円)
・TDK
増収率:17.5%(四半期の売上高5870億円)
電子部品業界では、増収率がトップだったTDKなど3社が前年同期比で増収となった。一方、村田製作所は「独り負け」の2桁減収となった。
増収だった3社の中でも、日本電産は第3四半期累計(22年4~12月期)の売上高・最終利益が「過去最高」を更新するなど好調だった。
だが、一見すると「勝ち組」である日本電産は、2023年3月期通期における営業利益・最終利益の見通しを下方修正した。
売上高は前期比14.7%増の2兆2000億円(従来予想から1000億円増)に上方修正したものの、営業利益は同35.4%減の1100億円(従来予想から1000億円減)、最終利益は同55.8%減の600億円(従来予想から1050億円減)を見込んでいる。
その要因は、今年度中に「抜本的な収益構造改革」に取り組むためだという。
永守重信会長は決算会見で、「外部からみえた方々(前経営陣)が非常に好き放題の経営をやられた。大きな負の遺産を作って去って行かれた。(それによって生じた)いろんなゴミを全部、今期中にきれいにしてしまう。何一つバランスシート上においても課題を残さない」と語った。
足元では売上高・最終利益で「過去最高」を記録していながら、大幅な減益下方修正を余儀なくされた日本電産。その足元の業績は具体的にどうなっているのか。
次ページ以降では、前社長・関潤氏がかつて担当していた車載事業を中心に、日本電産の第3四半期決算について詳しく解説する。