企業による新卒社員の獲得競争が激しくなっている。しかし、本当に大切なのは「採用した人材の育成」だろう。そこで参考になるのが『メンタリング・マネジメント』(福島正伸著)だ。「メンタリング」とは、他者を本気にさせ、どんな困難にも挑戦する勇気を与える手法のことで、本書にはメンタリングによる人材育成の手法が書かれている。メインメッセージは「他人を変えたければ、自分を変えれば良い」。自分自身が手本となり、部下や新人を支援することが最も大切なことなのだ。本連載では、本書から抜粋してその要旨をお伝えしていく。
説得しようとするほど、相手は頑固になる
「私の部下には、頑固な者が多くて困っています」
どうしてその人のまわりには、頑固な人が集まってしまうのでしょうか?
それは偶然なのでしょうか、それとも呼び寄せているのでしょうか。
実はそのどちらでもなく、頑固な部下を育成しているのです。
その人と接することで、普段は何でもない人まで頑固になってしまうだけなのです。
もちろん、もともと頑固な性格の人もいるかもしれません。しかし、それをさらに頑固な性格に増長させてしまうのです。
逆に言えば、その人とは頑固にならなければ、つきあっていくことができないということです。
それは、その人が相手を説得しようとするからです。
説得されると否定されたような気になる
相手を説得しようとするほど、相手は説得されまいとして頑固になっていきます。
そうなると、相手は自分の考え方に固執して、何が正しいかが判断できなくなります。何が正しいかよりも、自分の考えを優先しようとするからです。
説得されるということは、自己の存在価値を否定されるような気になってしまうのです。
そうなると、お互いが自分の考えを主張することにエネルギーを費やし、本当に意義のある議論ができなくなってしまいます。
そして何よりも、そこで使われる時間とエネルギーは膨大なコストです。
それでも無理やり、なかば強制的に説得すれば、相手は嫌々仕方なく行動するようになるかもしれません。
しかし、それでは生産性の高い仕事はできません。さらにそれを繰り返せば、相手は次第に疲弊し、精神的にも行き詰まってしまうことになるでしょう。
そのような相手の意識は、将来必ず数字となって職場や会社に返ってきます。
相手が本気になって行動するためには、相手を説得するのではなく、共感させることが必要なのです。