福岡の菓子メーカーで、駅や空港、高速道路SAなどのレストラン経営を手掛ける風月フーズは1949(昭和24)年創業、創業74年という老舗だ。2020年に社長が交代したのをきっかけに、社内システムをGoogle Workspaceでフルクラウド化した。さらに同社では業務効率化のため、業務アプリのノーコード開発に着手。社長はITに詳しいわけではないが、平均年齢50歳のチームに参加、自身も率先してアプリ開発に取り組んでいるという。(ノンフィクションライター 酒井真弓)
老朽化したシステムに勘ピューター
生き残りを懸けたDXが始まった
創業74年、菓子・パンの製造販売やレストラン運営などを手掛ける風月フーズ(福岡県福岡市)。2020年3月、事業承継で代表取締役社長に就任した福山剛一郎さんは、コロナ禍で客足が激減し、営業休止も余儀なくされる中、生き残りを懸けたDXプロジェクトをスタートした。
事態は深刻だった。基幹システムの全体像を把握しているのは、35年間システムを担当してきた管理部の田中茂任さんくらい。サーバーの老朽化に加え、代替部品が廃盤になるのも珍しくなく、いつ業務が止まってもおかしくない状態だったのだ。
拠点間のコミュニケーション手段といえば、電話かFAX、紙でのやりとりがほとんどだった。
「一番の課題は、組織内のコミュニケーション不足でした。当社は複数の事業を展開していて、働く場所は空港や駅、サービスエリアなど多岐にわたります。約500人の従業員がどこで何をしているのか、互いに興味を持つきっかけすら作れていませんでした。加えて、物事の判断は、経験と勘と度胸、いわゆる“勘ピューター”に頼っていました。データを基に自律的に考えてアクションできる会社にしたい。そう思って改革に着手しました」(福山さん)
今どきの働き方や経営スタイルへの憧れもあったという。
「私、若干ミーハーなところがありまして、ホリエモンさんが『仕事は全部スマホでできる』とか言うのに憧れちゃったりするんですね。出張先でもいつも通り仕事ができるとか、データを使ってスピーディに経営判断を下せるとか、私たちもそうなれたらカッコいいなって」(福山さん)