2月上旬に上海にいた際、多くの日系の企業、金融機関の関係者から、「日本に頑なだった中国政府に雪解けムードが表れてきた」という話を聞いた。山口那津男・公明党代表の訪中が効いた面もある。
「環球時報」2月4日付は「日本との戦争は、勝とうが負けようが、破滅につながる」という中国社会科学学院の識者の論文を掲載した。過激な反日報道で知られる同紙ですら、そのような論文を載せる空気に変わったと思った直後、5日に中国の艦船が日本の艦船にレーザー照射する事件が報道された。
日本との関係を改善したがっている一派もいれば、それを知ってあえて対立を煽ろうとしている一派(軍部など)もいるのが、今の中国だ。日本サイドは挑発に乗らないことが大事である。
その事件の中国メディアの報道は、日本サイドの報道に比べると、テンションが低いものが多かった。尖閣諸島問題で反日感情を再び強く刺激することを北京があまり望んでいないこともあるだろうが、それに加え、他に大きな話題のニュースがめじろ押しで、それどころではない、という雰囲気もある。
一つは深刻な大気汚染問題だ。PM2.5という大気汚染の濃度を示すインデックスが上がれば大騒ぎになるし、逆に下がっても「今年最低値が記録された」とニュースになる。連日、紙面上では対策が議論されている。
汚職摘発の記事も多い。共産党は、役人の腐敗を見つけたらインターネットに書き込むように奨励しているため、告発が相次いでいる。中国の代表的な経済誌「財経」1月28日号は、反腐敗運動が「地雷区」に入ってきたと報じた。小物ではなく大物の汚職の摘発に政府はどこまで本腰を入れられるかが人々に注目されている。