仕事ができない人は「解像度が低い」、思考に足りない4つの視点とは写真はイメージです Photo:PIXTA

「製品やサービスを改善して売り上げを上げたい」「業務の生産性を上げたい」――。こういったビジネスパーソンが抱えるさまざまな課題を解決するために必要なのが、「解像度を上げる」ことです。もし誰かに「ふわっとしている」「ピンとこない」と言われたり、うまくいかないと感じていたら、その理由は「解像度が低い」からかもしれません。そこで今回は、数々の起業家へアドバイスを行ってきた東京大学FoundXディレクターの馬田隆明氏の著書、『解像度を上げる――曖昧な思考を明晰にする「深さ・広さ・構造・時間」の4視点と行動法』(英治出版)から、解像度の高い人が持っている4つの視点を、一部抜粋して解説します。

起業家支援を続けてわかった
優れた起業家が見ている世界

 筆者は10年近く起業家支援を行ってきましたが、これまで接してきた中で優秀だと思える起業家はまさに「解像度が高い」人たちでした。彼ら彼女らに取り組んでいる領域のことを聞くと、明確かつ簡潔で分かりやすい答えが返ってきます。顧客が今困っていることを深く知っていて、顧客は週に何度その課題を体験し、解決のためにどんな競合製品を活用しており、どんな工夫や裏技をほどこして効果的に使っているか、そのときの顧客の感情はどういったものかといった細かいところまで話してくれます。話を聞くうちに一人の顧客像がはっきりと見えてくるかのようです。

 単に事実を細かく知っているというだけでなく、そこから導かれる洞察も鋭くユニークです。話を聞くたびに「へえ、実はそうだったんですね!」という驚きを提供してくれるので、話に聞き入ってしまいます。その原因分析も明快で、「なるほど、確かに……」と思わず納得してしまうのです。

 顧客についてだけではありません。優れた起業家は、市場、技術、ビジネスモデル、そして将来の事業計画といった、ビジネスで要求される多くの面で高い解像度を持っています。さらに情報が点としてばらばらに存在するのではなく、それぞれの情報が有機的につながっています。話を聞いているうちに、点在している情報同士が線や面、立体になって見えてきて、はっと気づくような瞬間もあります。そのうえ、情報が綺麗に構造化されているため、理解も容易です。

 現象の理解が優れているだけではありません。これからやろうとしていることの布石も見事です。それぞれの打ち手が歯車のように噛み合っていて、目の前の小さな一手を打つことで、小さな歯車が回り出すと、次々と大きな歯車が回り出し、社会全体が変わっていく、そんな予感すら与えてくれます。

 優れた起業家は、そうした高い解像度に辿り着くのが早い、つまり、解像度を上げるのが早いことも特徴的です。事業を別の領域に展開しようと思っている、という相談を受けてから少し経ち、次に会ったときに進捗を聞くと、新しい領域でも高い解像度を得ています。

 そうした高い解像度を持つ起業家は、顧客を魅了する製品を作り、説得力のある計画を作って投資家を説得し、資金調達に成功しています。

解像度が高い状態と解像度が低い状態の違い解像度が高い状態と解像度が低い状態の違い 拡大画像表示