40代のうちに「個人で1万円稼ぐ」経験が、定年後でも稼げる力につながる写真はイメージです Photo:PIXTA

人生、何が起こるか分かりません。定年後は、親の介護などで経済的に不安になることもあるかもしれません。たとえ副業でも、40代のうちから自分で稼ぐ力をつけておけば定年後も働けます。フリーランスは、まさかのための保険でもあります。

※本稿は、田中靖浩『ただの人にならない「定年の壁」のこわしかた』(マガジンハウス新書)の一部を抜粋・編集したものです。

令和フリーランスは「まさか」のための保険

 たとえ無料のボランティアでも、「やりたいことができる」状態は望ましいです。定年後、家にじっとしているのではなく、外に出てさまざまな活動を行って人と関わる。まったくもってすばらしいことだと思います。私はそれを理解した上で、「お金を稼ぐ」ことを提案したいのです。

 なぜそれが重要かといえば、定年後になって「お金を稼ぐ」必要が生じる場合があるからです。その最も典型的な例が「親の介護」です。自分は保険に入っていても、親が入っているとは限りません。親が入院したとき「お金がない。あなた払って」と言われたら拒否できますか?

 人生の後半になるといろいろなことが起こります。「まさか」ということも起こります。そのときのために私たちは保険に入り、貯金をするわけですが、それでも足りなければ「自分で稼ぐ」しかありません。「まさか」が起こらなければ幸いですが、それでも定年後に備えて「自分で稼ぐ」手段をもっておけば精神的にかなり楽です。

 サラリーマンの皆さんは、「自分で稼ぐ」経験を早めにしておいてください。定年を迎えてからやろうと思っても、おそらく不可能です。それに成功した例を私はほとんど知りません。できれば40代のうちに少額でもいいので、自ら有料サービスを提供して稼ぐ経験をしておきましょう。副業でいいので一度経験してみてください。そうすればわかります。会社で1億円稼ぐことと、生身の個人が1万円稼ぐことは、まったく異なる行為であることが。

 私の友人のなかには、親の介護で会社を辞めた人間が何人もいます。介護があると場所的、時間的な制約が生じてしまうので転職も難しいようです。ここで「自分で稼ぐ」方法をもっていれば金銭的にも足しになるし、外の社会とつながることができます。しかしその方法をもっていないとそこで社会との関わりが切れてしまいます。

 彼らを見るにつけ、サラリーマンのうちから「自分で稼ぐ」ことを意識するのは意味があることだと思います。本書で主張する「令和フリーランス」の生き方、つまり定年後にも働く自分を目指すことは、「まさか」に備えた保険の意味もあるのです。