「お客様から量販店に寄せられる意見のなかに、『出先でも飲めるように温かい水を置いてほしい』という声が増えているとの報告が上がっていました。同様の声はSNSでもしばしば見受けられ、一定のニーズがあることは認知していました」

 こうした白湯へのニーズが存在するとわかりつつも、アサヒ飲料の社内では「2014年に一度失敗しているのに、いま再販して本当に売れるのか」という声も少なからず存在したそうだ。

「しかし、外部の調査会社のデータによると、2009年には『白湯の飲用経験率』が11.8%ほどだったのが、2022年には61.0%と、約5倍の伸び率になっていました。白湯は女性が飲むことが多いと思われがちですが、男性に絞っても10.4%(2009年)から54.4%(2022年)の伸びに。この結果から、白湯は性別に関係なく幅広いターゲット層に向けて訴求できると考え、開発に踏み切りました」

白湯のペットボトルを
再販した狙い

 では、2009年から2022年で白湯の飲用経験者の割合が大幅に増えたのは、どんな理由があるのだろうか。

「最も大きな理由は、健康意識の高まりから“白湯”という言葉自体が浸透してきたことです。一般的に白湯が美容や健康にいいと認知されはじめたことで、白湯を生活の一部に取り入れたいと思う人が増えていると感じています。そのため今回は、2014年時点では商品名に入っていなかった『白湯』という文字を前面に打ち出したパッケージデザインにしました」

 白湯を飲むことで血の巡りがよくなり、基礎代謝の向上や便秘・冷え性の改善、美肌効果などがあることは、若年層から高齢者まで幅広い世代に普及してきている。

 一例だが、インスタグラムで「#白湯」で検索すると14.2万件もの投稿があるほか、「#白湯ダイエット」「#白湯生活」でも5000件以上の投稿があり(2022年12月6日現在)、それだけ白湯の効能に敏感なユーザーが増えてきたといえるだろう。

「白湯は朝一番に飲む“朝活”的な需要が高い一方で、忙しい朝に白湯をつくる時間が確保できなかったり、ゆっくり飲むことが難しい人もいる。そうした人に向けて、コンビニやスーパーなど、通勤中に立ち寄る場所で手軽に購入できる白湯を提案したいという思いもあります」

 加えて、近年の「こだわった水を飲みたい」というユーザーの増加も、今回の白湯再販の背景にはあるという。白湯はつくろうと思えば水道水をポットやケトルで沸かせばできてしまうものだが、それを“わざわざ購入してもらう”という戦略には勝算もあったそうだ。

「通常のミネラルウオーターの飲用量も伸び続けており、『お金を払って飲料水を買う』ことが一定数の人に受け入れられています。今回の白湯も、ただ水を温めたものではなく、口当たりのいい天然水の白湯という意味で、商品化しても手にとっていただける人は多いのではないかと考えました」