赤ちゃんなのに気を使ってしまう!?

「守ってもらえないかもしれない」と感じると、まだ赤ちゃんなのに、生き残るために気を使い始めます。人間は「群を離れたら野獣に食べられてしまう」という動物的な本能が備わっているからです。

大人になっても、この傾向は続きます。本人は「生き残るために気を使っている」という自覚はありません。しかし、動物的な本能なので、「不必要な場面でも気を使ってしまう」「自分に不親切な人にまで親切にしてしまう」という行動を反射的にとってしまいます。

すると、その動物的な本能が研ぎ澄まされ、人の気持ちにますます敏感になります。生き残るために他人に気を使ってがんばり続けなければならなくなってしまうのです。

この「大丈夫じゃないのに、大丈夫なふりをした」という本のタイトルがまさに「動物的な本能」を示している気がします。

本の中に「ずっとガマンしてきたあなたへ」とありますが、冒頭でもお伝えした通り、他人の気持ちに敏感で、嫌なことを嫌と言えない、人知れずガマンし続けてしまう人がものすごく増えています。

それは、「生まれてきて安心」という感覚を得にくい世界になってしまったからではないか、と私は考えています。

かつては、「子どもは先祖様からの授かりもの」という当たり前の感覚がありました。

その概念がいつのまにか失われて、生まれたばかりの頃から常に危機を感じるようになり、動物的な本能のほうが優先される状態。「他の動物に弱みを見せてはいけない」から人知れずガマンすることになるのです。

この本にもあるように「私は人付き合いに問題があるかも知れない」と多くの人たちが思うのも納得です。なぜなら、本当は「人間」らしく、楽しくコミュニケーションをとりたいのに、いつも「動物的な本能」でビクビクしながら、生きるか死ぬかの状態なわけですから。

温かい言葉が「本来の自分」に戻してくれる

私の子どもの頃からの口グセは、「早く人間になりたい」でした。これは、妖怪の出てくるアニメの主人公のセリフです。

なぜなら、いつも他の人と自分はちがうような気がして、人にものすごく気を使ってガマンしてがんばり続けなければいけないと思っていたから。

他の人のように「楽しい」とちっとも感じられず、いつも心の中は人に振り回されていました。この本は、そんな生き方をしてきた人に役に立つかも知れない、と思いました。読み進めるうちに、全編にわたるシンプルで優しい言葉に涙しながら読んでいました。

そう、繊細な人が人間らしい、自分らしい感覚を取り戻すには、優しい、温かい言葉が必要なのです。

この本のそんな優しい、温かい言葉に触れたときに、自分が再び動物から人間に戻っていくような、不思議な感覚がありました。人間は動物とちがって言葉がある。優しく温かい言葉が、本来の「自由に楽しく生きられる人間」に戻してくれるんです。