回転ずしでは
もう、すしを回転させない!

 現在、回転ずし業界では、天候、曜日、来店時間による客層、注文数等々、あらゆる売り上げデータが蓄積されており、それを効率化に利用するのはお手のものとなっている。そのデータ力を活用するのだ。

 客には待ち時間にタブレットや携帯電話でQRコードによりメニューを読み込み、そこで注文してもらっておく。客は来店時に情報を入力するので、入店待ちの客数などは把握できる。待ち時間を予測することはそれほど難しくないはずだ。それを計算し、適切なタイミングで事前に注文してもらった品を準備する。そして、客が席に着いたらすぐ注文品をレーンに流せるようにするのだ。ただし、事前に会員登録して連絡先がわかる者しか、注文ができないようにしておくべきだ。そうしないと、注文だけして帰ってしまう新たな‟すしテロリスト”を生んでしまう。

 こうすれば、レーンに回るすしはゼロにできる。これは結果的に、客の店内滞在時間(回転率)を、好転させることにもつながるだろう。

 なお、客の食事後、ホールスタッフがテーブル清掃の際に先ほどの「台座セット」を回収する。これで前の客が使ったものは全て回収することができ、衛生管理を徹底することができる。つまり、最初に客が席に着いたときには、テーブル上には何も置かれていないことになるのだ。

 こうすれば、レーンに流れるすしはゼロになり、迷惑行為を行うことができなくなるだろう。今よりも、来客予想の精度を高め、効率良くすしを提供する必要があるが、それはすしロボットの増強を図ることなどで対応は可能だろう。

「回転ずしは回っているのが楽しいのに…」といった意見もあるかもしれないが、そうした「楽しさ」については、握りずしだけでなく、ちらしずし・手巻きずしセットの自作メニューなどを開発するなどして、新たなサービスを提供すればよい。ちらしずし、手巻きずしなどは、子どもが自ら作って食べる楽しさが演出できるのではないか。

 また、いまある通常レーンには、POP(販売促進のための広告・宣伝物)をまわすようにしてみてはどうか。それも、単にPOPを流すのではなく、店舗ごとに希少価値の高いすしネタのPOPを流し、それを見て、パネルをタッチして注文してもらうようにする、といった工夫もできるだろう。店舗ごとの「人気ベスト10」のPOPを流すのもいいかもしれない。

 それらにかかるコストは、客の満足度を得るための必要経費とみなすしかない。

 なお、防犯カメラを設置し、“テロ行為防止”のために店内を撮影する案もあるが、これは顧客を信用しない“監視”でもあり、来店客が減ってしまうことは容易に想像できる。

 防犯カメラを設置せずに、現在の回転レーンを活用しながら‟テロ行為”を防止して客の信頼を得るには、これくらい大胆な改革が必要ではないだろうか。

 今回の回転ずしでの迷惑行為の問題がいったん終息しても、今後も飲食サービス業は、新たな脅威が現れる度にその都度対処していかなければならないだろう。

 サービス業は商品を提供する産業と違い、形がなく目に見えないもので客に喜んでもらう産業だ。だからこそ、サービスを提供する店とそれを受け取る客とが、目に見えない強固な“絆”でつながり、その上で関係が健全に成り立ってほしいものである。

【訂正】記事初出時より以下の通り訂正します。
26段落目:「魚べえ」→「魚べい」
(2023年3月1日17:49 ダイヤモンド編集部)