「世界史とは、戦争の歴史です」。そう語るのは、現役東大生集団の東大カルペ・ディエムだ。全国複数の高校で学習指導を行う彼らが、「戦争」を切り口に、世界史の流れをわかりやすく解説した『東大生が教える 戦争超全史』が3月1日に刊行された。世界史、現代情勢を理解するうえで超重要な戦争・反乱・革命・紛争を、「地域別」にたどった、教養にも受験にも効く一冊だ。古代の戦争からウクライナ戦争まで、約140の戦争が掲載された、まさに「全史」と呼ぶにふさわしい教養書である。今回は、本書の刊行にあたり、著者に「あっとういう間に終わった戦争」について教えてもらった。

わずか40分で終戦!? ギネスにも認定された「世界一短い戦争」とは?Photo: Adobe Stock

たいていの戦争はそう簡単には終わらない

 ウクライナ戦争が発生してから1年がたちました。ロシアは短期決戦を望んでいたとの見方も多く、そう考えるとロシアの思惑通りにはいかなかったと言えるかもしれません。

 歴史的にみると、長期間に渡って争われた戦争が目立ちます。『東大生が教える戦争超全史』で紹介した戦争の中には、100年以上続いたものもあるほどです。近代以降、戦争の平均的な継続期間は数ヵ月以上だと言われており、戦争はそう簡単には終わりません。

 一方で、あっという間に終わってしまった戦争もいくつかあります。今回は、その「短い期間で終わってしまった戦争」をいくつか紹介したいと思います。

超短期間で決着がついた戦争3選

 まずは、『東大生が教える戦争超全史』でも紹介したプロイセン=オーストリア戦争です。プロイセンとオーストリアによるこの戦いは、プロイセンが7週間という短期間で圧勝したため、「7週間戦争」と呼ばれることがあります。

 日本がかかわった戦いでは、薩英戦争が短いことで有名です。これは日本の薩摩藩とイギリスとの戦いで、「3日間」という超短期間で終わりました。

 この戦争のきっかけは、幕末の1862年に起こった「生麦事件」です。薩摩藩の大名行列を無視したイギリス人を薩摩藩士が殺害してしまった事件で、これに激怒したイギリスと薩摩藩の間で戦争が起こりました。

 イギリスは、当時最強の国です。それと日本の一部である薩摩藩が戦うわけですから、イギリスの圧勝で間違いないと思われていたことでしょう。

 しかしなんと、ここで薩摩藩は善戦しました。ちょうど開戦した頃に台風が襲来したこともあり、薩摩は鹿児島湾に入ってきたイギリス艦隊を砲撃してよく戦ったのです。イギリスは薩摩藩の城下や砲台に大きな打撃を加えましたが、3日戦ったところで物資などが底をついたため撤退しました。結局、イギリス側は薩摩藩の2倍以上の死傷者を出す結果になってしまったと言われています。

 なお、薩摩藩はイギリスを撤退させましたが、その後の交渉の結果、イギリス側に対して償金を支払い、生麦事件の犯人を捜索することも約束しました。どちらの勝利とも言い難い戦争となりましたが、この戦争でイギリスと薩摩藩は互いの強さを認め、その後の歴史に大きな影響を与えることになりました。