新興国や開発途上国ではこの値は低いので、日本は世界で最も高齢化が進んだ国だ。日本経済から活力が奪われたとしばしば言われるが、その大きな原因が人口高齢化にあることは、間違いない。

かつては英米のほうが高齢化国

 日本は、昔から高齢化率が高かったわけではない。図表1-4に示すように、1980年代頃までは、イギリスやアメリカのほうが高かった。

 とくに、イギリスが高かった。観光地に行くと、老人が多いのが印象的だった。それに対して、日本の観光地には若い人たちが多い。大きな違いだと思った。

 当時は、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と賞賛されていた時代だ。そしてイギリスは、「イギリス病」で疲弊の極にあった。アメリカ経済もふるわず、アメリカ人は、「われわれの子供たちは、われわれより貧しくなる」と真剣に心配していた。

 その当時の英米と日本との経済力の違いをもたらした大きな原因が、人口構造の違いだったのだ。

 ところが、1990年代の中頃以降、日本の高齢化率が急速に高まり、英米を抜いた。そして、この頃から、日本経済の長期停滞が始まった。なお、図表1-4には示していないが、多くのヨーロッパ諸国も、英米と同じような推移をたどっている。

出生率低下で、少子化がさらに深刻化

 これまでも深刻であった日本の少子化が、さらに深刻化している。厚生労働省が2022年6月に発表した人口動態統計によると、2021年の日本の出生数は81.1万人で、1899年以降で最少となった。

 国立社会保障・人口問題研究所が2017年に公表した将来推計は、3パターンの出生数を想定している。このうち通常使われるのは「中位」だが、そこでは、2021年の出生数を86.9万人としている。そして、「低位」(悲観的なシナリオ)では75.6万人としている。2021年の実際の出生数は、これらの中間の数字になった。

 人口推計は、長期予測の基本となるものだ。これまでは、さまざまな政府見通しのほとんどが「中位推計」を用いていた。前記の結果を踏まえて、今後は、さまざまな長期推計の見直しが必要になるだろう。