「実力主義」「労働時間」「専門性」
格差を少なくする3つのポイント
ランキングで男女の賃金格差が最も小さかったのは、大手精密機器メーカーのキヤノンと携帯電話販売代理店のベルパーク。差額は1万円で、ほぼ差がなかった。
キヤノンは、2005年ごろから役割によって賃金が決まる役割給制度、いわゆる「ジョブ型」の給与体系にいち早く切り替えていた。それが男女間での年収差が生まれにくい要因といえそうだ。
口コミを見ると、「G2等級からG3等級は、社内の試験に合格すれば、数年で昇格できる。ここで、年収が一段変わる」(開発・男性)、「開発部門では女性社員が少ないものの、仕事内容や待遇で男性社員と差が出ることはない。出世に関しては、男女比率から考えると、女性の管理職も少なくないと思われる」(開発・女性)といった声が上がっており、男女格差のない実力主義の様子がうかがえる。
ベルパークは、「体育会系で実力、実績主義。常に気持ちを高く持ち続け利益を追う(実績を出す)、チャレンジすることをいとわない。若くても実力があればステップアップでき、基本給・年収を上げることができる」(店長・女性)、「評価制度も他の上場企業に比べて設計が細かく、一般的なMBOよりも細かい指標が組まれている。成果評価も完全にデジタルで個人の成果が適切に反映され、やりがいがある。一般的に言う上司のお気に入り評価が一切入り込まない仕組みになって所が良いと感じる」(販売・男性)という口コミからわかるように、男女の区別なく成果を出せば給与に反映される仕組みのようだ。
つまり、実力主義が男女の賃金格差の小ささにつながっているのだが、他にも要因がある。
アパレル(9位のITXジャパン、21位のエイチ・アンド・エム ヘネス・アンド・マウリッツ・ジャパン)や小売(3位のローソン、11位のジンズなど)、航空関連(21位のANAエアポートサービス、28位のスカイマーク)といった、現場・現業系企業も多くランクインしている。
「シフト制の為繁忙期以外は希望の休みは取りやすい方だと思う。有給休暇も取りやすいので閑散期にはまとめて休暇をとることもでき、プライベートは充実させられると思う」(ITXジャパン<ZARA>、店長・男性)、「残業もない為ほぼ時間通りに帰社でき、プライベートな時間はしっかり取ることができる。また、有給もしっかり消化させてもらえる為、自分の時間を持てやすい」(エイチ・アンド・エム ヘネス・アンド・マウリッツ・ジャパン<H&M>、販売・女性)といった、シフトの組みやすさが挙げられている。
また、薬・医療系企業(6位の武田薬品工業、21位のアステラス製薬など)、官公庁(3位の国税庁、6位の裁判所など)も数多くランクインしている。その口コミを見ると、「男性しかできない仕事、女性しかできない仕事はなく、一人の人間として扱われている感覚があります」(国税庁、調査・女性)、「専門性の高い仕事であるため、常に勉強することがある一方、激務ではないので、女性が私生活を充実させながらキャリアを積んで行きやすいと思います」(裁判所、調査官・女性)といった専門性の高さが特徴的だ。
要は「労働時間の調整のしやすさ」と「専門性の高さ」の2つが勤続しやすい状態をつくり、結果として男女の賃金格差の小ささにつながっているといえそうだ。