かつて4.53もあったのに、なぜ少子化に?

 近年、韓国の少子化は深刻化している。特徴として、OECD加盟国中、そのスピードは突出して高い。それは、短期的にも、中長期的にも、韓国経済にとって大きなマイナスだ。

 過去の少子化対策などを見る限り、韓国の出生率低下に歯止めのかかる展開は想定しづらい。韓国統計庁のデータを確認すると、1970年の時点で出生率は4.53もあった。同年、OECD加盟国の出生率の平均値は2.84だった。

 それが1970年代前半に4.00を切り、84年には1.74まで一気に低下した。同年のOECD加盟国の平均値は2.06、わが国は1.81だった。当時、韓国は国土の狭さや天然資源の埋蔵量の乏しさ、高成長を背景とする急速な需要拡大、それによる物価上昇への懸念などを背景に人口抑制策を取っていて、その結果だった。

 その後も韓国の出生率は低下基調だ。一つの要因として、97年にタイを震源地にしたアジア通貨危機が発生したことは大きい。輸出や海外からの直接投資などによって外貨を獲得し経済を運営してきた韓国は、アジア通貨危機により急速に資金が流出し、自力での経済・財政運営が行き詰まった。韓国政府はIMFに支援を要請し、何とかこの危機を克服したが、当時の混乱が国民心理にかなりの不安を植え付けた。98年、韓国の出生率は1.46、05年には1.09に低下した。

 その状況に危機感を強めた韓国政府は、少子化対策を強化した。一方、貿易面ではサムスン電子をはじめとする財閥系大手企業が輸出競争力を高めた。02年頃から米国では住宅バブルが発生し、中国経済も高成長を遂げた。そうした世界経済の好転に支えられ、大手企業の業績が拡大し、経済成長率も上向いた。

 こうした景況が所得再分配を下支えし、人々の生活のゆとりも幾分か増した。一時、韓国の出生率は持ち直し、12年は1.30だった。