国民的人気を誇る「ひふみ投信」などを運用するレオス・キャピタルワークス(以下レオス)が、フジ・メディア・ホールディングス(以下フジHD)の株式を5%超取得し、世間の注目を集めている。その理由は、インタビュー前編の「アニメと牛丼が“日本株の希望”に? 米国株を捨てフジHDの株を買うワケ【藤野英人氏インタビュー・前編】」でも説明したとおり。後編では、株式取得を足がかりにフジテレビ清水賢治社長に未来に向けた提言を行う、その真意を探るべく、ファンドマネジャーの藤野英人さんに話を聞いた。(ダイヤモンド・ザイ編集部)
「どん底」評価のフジHDに何が!?
IP企業としてまさかの「大復活」へ
――日本株は、相対的に魅力的な市場であり、特に今後はIP(知的財産)企業に注目していると伺いました。今後フジHDはIP企業として魅力が高まると?

Photo by Kuninobu Akutsu
藤野 ええ、フジテレビはもともと『踊る大捜査線』シリーズなど、映画製作において高い実績とノウハウを持っています。また、WOWOWやTVer(ティーバー)といった動画配信プラットフォームの株主でもあり、今後の配信ビジネスの展開にも期待が持てます。
アニメ『鬼滅の刃』の製作委員会に参加していたり、世界的に人気が拡大している「ちいかわ」などの有力IPも保有しています。「ちいかわ」は、もともとSNSで人気の漫画でしたが、フジテレビ系列の朝の情報番組「めざましテレビ」内でアニメ化したことで、人気拡大に繋がりました。今では海外から「ちいかわ」目当てで日本に観光に来る人がいるほど、強力なIPに成長しています。
――フジHDの役員人事案について、フジHD側と株式を7%超保有する米投資ファンドのダルトン・インベストメンツ側から、異なる提案が出されました。
藤野 個人的には、両社の提案の良い点を組み合わせた折衷案が良いのではないかと考えています。ダルトン側はフジテレビ・清水賢治社長の退任を求めていますが、私は清水社長は続投すべきだと考えています。彼はもともとアニメ部門の出身であり、一連の問題が指摘されているバラエティや報道部門の担当ではありません。『Dr.スランプ アラレちゃん』『ドラゴンボール』『ちびまる子ちゃん』など多数の大ヒットアニメのプロデューサーとして有名です。フジHDが今後IP企業としてさらに飛躍していくためには、最適な人材だと思います。
――ダルトン側の提案には、レオスの親会社であるSBIホールディングスの北尾吉孝会長兼社長も含まれています。
藤野 北尾さんが取締役会に入ることは、フジHDの企業文化を変革するという観点からは、必ずしも悪いことではないかもしれません。しかし、メディア企業で働く人々にとって、北尾さんは少々“業界外の計り知れない存在”に映る可能性はありますよね。