銀行員の「羅針盤」ともいうべき業績評価制度。銀行では店舗削減や人事評価制度に関しては大胆な改革が進んでいる一方で、業績評価制度は依然として単年度の収益偏重評価にとどまっている。銀行で退職者が相次ぐなか、銀行員のやりがいにも直結する業績評価を見直すことは非常に重要だ。銀行はいかにして業績評価を見直していくべきか。
業績評価制度の陥穽
筆者は銀行の業績評価制度に関して大きく三つの問題意識を持っている。一つ目は、単年度の収益偏重評価により「プロダクトありき」の稼ぎ方が根付いている点だ。銀行ではここのところ、担保評価重視から事業性評価重視の融資姿勢に変わりつつある。ヒト・モノ・カネを総合的に評価する事業性評価の手法では、与信リスクを継続的にモニタリングしながら、顧客との長期的な信頼関係を築くことができる。
しかし、業績評価制度では「通常の貸出金」にはあまり高い評価が付かない。そのため、銀行員は営業店内の業績プレッシャーから、手始めに私募債や金利スワップ、コベナンツ付ローンなど高い業績評価につながるプロダクトに絡めた案件組成を検討しがちで、顧客意向を二の次にする傾向がある。つまり、プロダクトを絡めて収益案件化しないと現場が評価されない実態が、歪んだ案件組成を多発させているといえる。
二つ目は、銀行がトップライン収益に傾注していて、ボトムライン収益の位置付けが低くなっている点だ。例えば、銀行では貸出債権の健全性を保つため、定期的に信用格付けの見直しなどを実施している。地味でハードではあるが、銀行決算に与える影響も大きい重要な業務だ。にもかかわらず、業績評価上は「当たり前」の業務に位置付けられているために、不遇な思いをしている担当者は多く存在している。