「上野千鶴子フィーバー」の本質とは何か

 インタビュアーの3人には何となく既婚者としてにじみ出る優越感のようなものがあったが、動画の中で上野さんは終始笑顔で、落ち着いた口調だった。

「フェミニストの中には、結婚している人も、していない人も、子どもを産んだ人も、産んでいない人もいる。別に、結婚していないフェミニストが偉いとは思いません。化粧しないとか、ブラジャーしないとか、そういうふうなものが正しいフェミニズだという序列があるみたいですけど、それは教条主義というんです」

「私の中のフェミニズムというのは、自由になりたいという思想です。自由に生きることができればそれでいいじゃないですか。フェミニズムは自分が傷ついた経験、不当な経験がある時に、言葉が与えてくれます」

 上野さんのこうした話を聞いて、SNSでは「叡智に富むお話を聞くことができた、素晴らしい! しかも、上野先生はなんと優雅な女性なのだろう。我が国の最高峰大学の出身者のパジャマ姿とはまったく違う。思考レベルも雲泥の差だ」「動画で上野先生が、自分のお母さんとの関係の話をするのを聞いて、温かさを感じました。同じ女性として共感することが非常に多かったです」など、称賛の声が巻き起こっていた。

 今回の騒動で寄せられた批判の声には、中国のさまざまな社会問題が凝縮されていた。一つは、「中国の教育の限界」という指摘だ。学校の勉強はよくできても、自由な発想ができないエリートを生み出しているのではないか。また、「中国は経済大国になったが、人々の意識は昔と大して変わってない、女性がさまざまな差別や束縛から解放される日はまだまだ遠い」という声もあった。

 中国で起きている「上野千鶴子フィーバー」の本質とは、現代の中国人女性たちが求める、これからの新しい女性像への渇望なのかもしれない。