【周囲の人はどうすればいい?】
「正直で率直」だけが最善でないことを、真正面から話してみる

 事実を言っているのになぜ問題になるのか、理由が理解できていないASDの患者さんに、私はよくこんな話をします。

「正直で率直なことは、悪いことではありません。でも世の中は、時に真実を言わないことで、相手が不快な気持ちになるのを防いでいます。たとえば、誰かが新しい服を着てきたとき、いきなり『似合わないね』と言ったらどう?仮にそれが事実だとしても、言われた方はうれしくはないですよね。

 言っても良いかどうか判断がつかないときは、発言を控えるというのも一つの手だと思うよ」

 もし、あなたの周りに同じような特性を持つ人がいたら、一度真正面から論理的に、そして心を込めて話してみてはいかがでしょうか。特性の程度にもよりますが、理解してくれる人もいるはずです。

ここがポイント!
・ASDの人は人間関係や人の感情より、事実を優先しがち
・相手を不快にしてやろうという意思はない
・論理的に、心を込めて話し、理解を促そう

「自分かも?」と思った人へ、生き方のヒント

書影『発達障害の人が見ている世界』『発達障害の人が見ている世界』岩瀬利郎著(アスコム刊)

 何でも正直に発言すると、時に人を傷つけてしまうことがあります。でも、人の顔色を気にせず、思った通りの発言がいつでもできるというのは、周囲に流されずにはっきり意見を言えるというあなたの長所でもあります。

 うまくコントロールできれば、仕事でも人生でも、それはあなたの強みに変わります。

 そこで、一つアドバイス。

 何か発言しようと思ったら、ひと呼吸置いて相手の気持ちを想像してみましょう。そのワンクッションを置くことで、「これは言わない方がいいな」「この言い方は傷つけてしまうかも」とわかるようになることもあります。

 それさえできるなら、いつも正直でいることは、決して悪いことではありません。

 むしろ、裏表のない人として、人から信頼される大きな魅力になってくれることだってあるのです。

岩瀬利郎(いわせ・としお)/精神科医、博士(医学)、東京国際大学医療健康学部准教授

岩瀬利郎(いわせ・としお)
精神科医、博士(医学)。東京国際大学医療健康学部准教授/日本医療科学大学兼任教授。埼玉石心会病院精神科部長、武蔵の森病院院長、東京国際大学人間社会学部専任教授、同大学教育研究推進機構専任教授を経て現職。精神科専門医、睡眠専門医、臨床心理士・公認心理師。著書に『心理教科書 公認心理師 要点ブック+一問一答 第2版』、『心理教科書 公認心理師 完全合格テキスト 第2版』(ともに共著、翔泳社)など。メディア出演に、テレビ東京系「主治医が見つかる診療所~寝起きの悪い人と寝起きのいい人の体は何が違うの~」、 NHK BS プレミアム「偉人たちの健康診断~徳川家康 老眼知らずの秘密~」など。