前回述べたのは会話などのバーバル(口頭の)・コミュニケーションだが、今回は簡字体の読み方について述べる。統計や文書を「読む」という観点からすれば、このほうが重要とも言える。

利用者の立場から
簡字体にアプローチする

 日本も中国も、1950年代に漢字の簡略化を行なった。その当時の両国の関係を考えれば当然のことだが、日中で独立に行なわれ、共通化の努力はなされなかった。この結果、日本と中国本土の漢字がかなり乖離し、互いに他国の漢字が読めなくなるという事態が生じた。

 ただし、簡字体のかなりのものは、一定の法則に従って簡略化されている。その法則を知っていれば、かなりの簡字体を、格別の努力をせずに読むことができる(ただし、残念ながら、すべてがルールに従って読めるというわけでもない)。以下で述べるのは、そのようなルールである。

 なお、この問題に関しても、供給者の論理と利用者の論理の衝突がある。供給者は、普通、できるだけ多数の漢字をカバーしようとする。網羅的にしておかないと、「あの漢字がないではないか」との批判を受けそうな気がするからだ。しかし、そうすることによって、あまり使わないような字も含めて多数の漢字を扱うことになってしまい、利用者には壁が高くなる。

 利用者の立場からすると、あまり労力をかけたくない。頻繁に登場する漢字が読めればよいのであって、あまり使わない漢字はいらない。もし必要になれば、辞書を引けばよいからだ。だから、必要なものを最小限の努力で習得したい。私自身が利用者であって、プロの中国語教育者ではないために、そうしたアプローチで簡字体にアプローチしている。