Web3は
「永続的」なシステムである

 ところが、ブロックチェーンとスマートコントラクトがその常識を覆しました。一度ブロックチェーン上にデプロイされたプログラムやデータは未来永劫存在し、作者が死んだ後も動き続けます。これは、Web3が非中央集権的であるからこそ、可能な仕組みです。

 もちろん、ブロックチェーンはネットワークでつながった多数のコンピュータによって維持されているわけですから、これらのコンピュータがすべて停止すればブロックチェーンは存在できなくなります。しかし、ビットコインのブロックチェーンやイーサリアムのブロックチェーンではマイナーのインセンティブが上手に設計されているため、ちょっとやそっとのことでブロックチェーンが機能を停止するとは考えにくいのです。イーサリアムのブロックチェーンは100年後にも存在していると私は考えています。

 データとプログラムが未来永劫残る。さらに、イーサリアムのブロックチェーンはオープンになっていて、誰でも利用することができます。オープンソースソフトウェアや、クリエイティブコモンズともすごく相性がよい。

 こうしたWeb3の特性は、人類史において画期的なことではないでしょうか。

今目にするWeb3の多くは
Web3ではない

 ただし、誤解を招かないように説明しておくと、現状で目にするWeb3的なものは、必ずしもすべてがWeb3ではありません。実際のところ「なんちゃってWeb3」も多いのです。

 Web3と称してメタバース的な立体映像やゲームの動画が流されるのを見たことはないでしょうか? 残念ながら、現時点では、あれらはほぼ「なんちゃってWeb3」といってもさしつかえないものです。

 たとえば、プレイすることで儲かると謳われる「Play2Earn ゲーム」の場合、プレイに必要なNFTや報酬のトークンは確かにブロックチェーン上に存在します。しかし、ゲーム自体は、社内外のサーバーやクラウドサービスなど従来型バックエンドを使ったウェブサービスとして作られており、会社が倒産すれば、それらのサービスも動かなくなってしまい、せっかく購入したNFTや稼いだゲーム通貨も、すべて無価値なものになってしまうのです。

 Web3のメリットとして特定の国や企業に支配されないことを挙げましたが、従来の技術を併用して提供される「なんちゃってWeb3アプリケーション」は、Web2.0までの時代と同じくサービス運営会社によってコントロールされており、Web3が理想とする非中央集権的なあり方とはほど遠い状態なのです。