プレイステーションの父と呼ばれる久夛良木健氏は、世界のギークからビジョナリー(未来を予見できる人)と呼ばれ続けている。そんな久夛良木氏が今年、近畿大学情報学部長に就任。若い世代にイノベーションの最先端を手ほどきする特別講義が、ビジネスパーソンにも非常に役に立つ内容だ。今回の「久夛良木ゼミ」の実況中継は、最近耳にすることが増えたWeb3.0について。今さら「Web3.0って何?」と聞けない人のために、久夛良木氏が本質を分かりやすく語った。
最近よく聞くけれど
Web3.0って要するに何なの?
Web3.0、またはWeb3って、このところよく聞く言葉です。メディアが盛んに伝えていますし、これに投資するぞという企業も続々出現しています。でもWeb3.0って一体何なのでしょうか?
実はWeb3.0は「まだ存在しないもの」なんです。正確に言うと、まだコンセプトしかない。「こういう技術規格です」「こんなサービスができます」というWeb3.0の実例がまだ出現していないのです。それどころか、Web3.0なるものが本当に実現するかどうかさえ、まだあやふやです。
もともとWeb3.0という言葉は、「ウェブの父」とも呼ばれる英国人科学者、ティム・バーナーズ・リー氏が提唱しました。なぜ彼がウェブの父なのかは、後で説明しますね。彼が考えたWeb3.0とはセマンティック・ウェブといって、言葉ではなくコンテクスト(文脈)・意味をコンピューターによって検索するという発想です。
これに対して、今議論されているWeb3.0はかなり違うコンセプトです。ではどのような考え方なのか?このWeb3.0のコンセプトを本質的に表現した、有名なCMがあります。数十年前の古いCMなのですが、まさに今議論されている本質を表現しています。