このペースで価格高騰が続くと
新築マンションは「絶滅危惧種」に
都区部には400強の駅がある。マンション1棟当たりの総戸数は平均88戸なので、都区部の供給が年間3.5万戸程度であれば、年に1度、全ての駅に、新築マンションが1棟ずつ供給されることになる。
かつてはこのペースでの供給が当たり前だった。だが、将来的に新築マンション価格が“1億円時代”になり、年間供給戸数が6500戸程度まで落ち込むと、1年間に供給される物件数は74棟程度しかなくなる。
この場合、5~6駅に1棟のペースでしか物件は供給されないことになる。新築を待っていても希望立地には出てこないリスクはかなり高い。たとえ出てきたとしても、栄えているエリアの反対側であったり、学区が違ったり、希望の間取りや面積ではなかったりすることもあり得る。
それ以降も価格高騰が続くと、新築マンションは「絶滅危惧種」になると言っても過言ではない。
では、このように持ち家の価格が高くなり、買える人が少なくなるとどうなるか。そう、賃貸物件に住む層が増えるのだ。
調査によると、2部屋以上の居室が欲しい層のターゲットになる、50~99平方メートルのファミリー賃貸住戸の数は約42万戸だ(2018年の住宅土地統計調査より)。
このデータは、UR(都市再生機構)賃貸住宅、都営住宅、一般企業の社宅を除いている。物件検索サイトに載っているような民間の賃貸住宅だけを数えたものだ。
ファミリー賃貸の空室率は、筆者が経営するスタイルアクト調べで6.0%程度と低い。空室数にして約2.5万戸になる。
一方で前述の通り、14~22年の間にマンション戸数は半減している。これから新築マンションの購入者が減っていくと、マンションを買えずに賃貸物件にとどまる人がさらに増え、空室率はさらに低下することが想定される。
筆者の試算では、賃貸にとどまる層は年間0.5万世帯ほどだ。先述した約2.5万戸の空室は、5年で埋まってしまう計算になる。