3本目の柱はスキンケア事業
なんと構成比は「目薬」超え

 その3本目の柱とは、スキンケア事業です。実はロート製薬のスキンケア事業は製品サービスに占める構成比が現在62%まで増大しています。目薬などのアイケア事業が全体の22%の構成比だということと比較すれば、ロート製薬がすでに目薬の会社から脱皮していることが理解できると思います。

 あらためてロート製薬のスキンケア商品のブランドを挙げると、機能性化粧品のオバジやスキンケア商品の肌ラボ、メラノCC、DEOCOなど、読者の皆さんが普段使いされている商品ブランドも多いかもしれません。

 ロート製薬は1970年代から日本におけるメンソレータムの販売権を持っていたのですが、バブル期の1988年にアメリカのメンソレータムの本社を買収してしまいます。今から振り返るとこの決断が未来への投資として大きかったのではないでしょうか。この買収によってスキンケア領域への進出に加えて、アジアや欧米などグローバル展開への道筋が同時に開けたことになります。

 直近のロート製薬のIR資料で、製品別地域別の売り上げマトリックスを公表しています。それによると2022年12月期は、海外売上高は全体の43%を占めています(会社ホームページの2022年3月期の39%の表記からさらに海外が成長)。アジアが29%、欧米が12%というように日本以外の事業の構成比が増えているのです。

 地域別に見て、最も事業規模が大きいスキンケアの売り上げを見てみましょう。日本では日本全体の55%の構成比ですが、欧州では99%、アメリカで75%、アジアで78%と、海外のロート製薬では圧倒的にスキンケアの売り上げが多いのです。言い換えれば、ロート製薬は海外では目薬の会社ではなくスキンケアの会社として知られているわけです。

 ちなみに胃腸薬のパンシロンで代表される内服薬事業の国内売り上げは201億円と、目薬の国内売り上げ213億円に匹敵するのですが、その99%は国内売り上げです。

 言い換えると、もしロート製薬が明治時代の創業事業である胃薬だけの領域にとどまっていたとしたら、今頃売り上げ200億円規模の国内でも弱小の胃腸薬メーカーだったでしょう。そして目薬で成長できたとしても総売り上げは500億円規模で海外比率は2割弱。ひょっとすると、海外事業は赤字レベルの悩めるポジションに陥っていたかもしれません。

 しかし、会社の寿命や製品寿命に逆らってM&A(企業の合併・買収)を通じてスキンケア事業へと進出したことで、新商品分野とグローバルビジネスの二つの扉が開いたのです。

 時価総額国内226位の「成長する百年企業」は、成長戦略の教科書に書かれているセオリーをきちんと踏襲した結果なのです。未来への投資とは、実に重要なものなのですね。