2008年12月、上海市政府の戦略企画部門の幹部と『張江ハイテクパーク』の幹部、計5名を同伴し、東京の地域冷暖房を視察のために東京を訪問いたしました。私は、たまたまこのハイテクパークの責任者が私の14年来の友人であった関係で、何とかしてくれということで、日本での手配全般を依頼された次第です。

 この張江ハイテクパークは、上海でも有数のハイテク産業(医薬、半導体、IT等)が集積するハイテクパークです。25平方キロの面積に、すでに5000社以上の企業が進出し、2007年で約6000億円の工業生産高を有します。

 このたび、このハイテクパークの中心部分、約1.5キロ平方メートルの地域に、オフィスビル、R&Dセンター、研究所、大学、五つ星ホテルからなるセントラル地区を建設(延べ床面積約70万平米)する予定で、ここに中国ではまだまだ普及していない、「地域冷暖房」を導入しようというのです。

省エネが待ったなしの中国
視察団も真剣そのもの

 これにより、個別のビルがそれぞれのエアコン設備を導入するのと比べ、相当な省エネ、コスト削減、CO2削減となる目論見です。これまでもこの連載でもお話ししてきました通り、中国にとっても省エネが国是の1つになってきていることは間違いありません。

 この視察団、実はもともと2008年の7月に予定していたものが、四川地震の関係で一時公務出張が全て凍結された関係で、12月になってやっと実現した次第です。

 ただし、2009年の着工予定は変更されておらず、時間的には相当切羽詰まったなかでの視察となりました。それだけに、この視察団、物見遊山といった雰囲気はまったくなく、視察先では相当真剣なやり取りが行なわれました。

 中国では、全国ですでに3~4箇所でさまざまなレベルの地域冷暖房が導入されています。ハード面の技術的にはそれほど問題なくとも、実際に供給業者とユーザーの利害を調整し、経営的にもバランスの取れた運営ができているところは皆無のようで、今回の視察の目的は、ハード面というよりも、より運用面のノウハウにあったようです。

 上海を代表するハイテクパークが導入するからには、技術的に先進的であるのは当然として、運用面、事業経営面でも中国のモデルとなるものを作り上げるのだ、という意気込み持って視察が行なわれました。