コロナ禍に従業員の高齢化、原材料高も直撃!
“駅そば”ビジネスの現状と今後は?
急いでいる時もサッと小腹を満たせる駅そばは、全国各地で徐々に姿を消しつつある。コロナ禍による鉄道利用者減少の影響は大きく、低単価・薄利多売で成り立ってきた駅そばは、ここ3年で閉店が相次いでいる。
また現在では、駅ナカ、駅チカにはコンビニやファストフードといった“小腹需要”のライバルが多数いる。駅そばを取り巻く環境は年々、厳しさを増している。
駅そば店は個人経営・家族経営の場合も多く、川村屋と同様、担い手の高齢化や後継者の不在から閉店するケースが後を絶たない。かつて、「駅そば日本一」と言われていた北海道・音威子府駅(JR宗谷本線)の「常盤軒」(前述した品川駅の常盤軒とは無関係)も、50年以上味を守り続けてきた店主が22年に他界し、そのまま閉店した。
あるいは実販が好調でも、鉄道会社側・駅側の都合で閉店となるケースもある。コロナ禍による緊急事態宣言明けに過去最高の売り上げを記録するなど、経営は順調だったはずの栃木県・小山駅の「きそば」は、JR東日本の関連会社の再編によって営業委託契約(駅構内での営業権)の更新を打ち切られ、22年1月に閉店。最後の1カ月は駅ホームの店舗に100人以上もの客が並び、思わぬにぎわいぶりを見せていた。
原材料費の高騰にも各店が苦しむ中、JR東日本管内では「生麺」の提供などで差別化を図り、同じ駅そばでも客単価が比較的高い「いろり庵きらく」や、「駅そば 榑木川(くれきがわ。長野支社管内)」への転換が目立つ。
また、小山駅「きそば」を運営していた中沢製麺は、直売所の出店や、材料を卸すことで駅の外に「きそば」提供店を増やすなど、むしろ勢力を拡大している。
むろん、味を守り続けることでファンをつかんで離さない店も多い。厳しい状況が続くなか、そういった店には、無理のない範囲で長く営業を続けてくれることを期待したい。
(ライター 宮武和多哉)