国税専門官として10年ほど相続税の税務調査に携わり、富裕層の相続対策の実態をつぶさに見てきた『元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者』(ダイヤモンド社)の著者・小林義崇氏と、30年以上世界の一流金融機関で投資に携わってきた『お金以前』(日経BP)の著者・土屋剛俊氏が、今年2月に発表されて話題となった政府の「税制改正大綱」を踏まえつつ、相続・贈与税対策について専門家の視点から語り合った。その特別対談の模様を4回にわたりお送りする。(構成/堀 容優子 撮影/稲垣純也)

【元国税×金融マンが明かす】スイミングや体操教室も!?1人につき1500万円まで非課税「教育資金贈与の特例」で節税せよ

「特例」を使って生前贈与する

【前回】からの続き
小林義崇(以下、小林) 
贈与税の「相続財産への持ち戻し期間」を3年から7年に延長することが決まり、大きな話題となったわけですが、国としては富裕層がため込んでいるお金を早めに現役層に移して、たくさん使ってもらいたいという思惑もあります。

親から子への生前贈与をなるべく早い段階で行われるように、税制で誘導することによって、現役世代により多くのお金を使ってもらい、経済を活性化させたいわけですね。そんなふうに現役層に使ってもらえる形の贈与なら、非課税で生前贈与できる特例もたくさんあります。

土屋剛俊(以下、土屋) 国にとってメリットのある形での生前贈与なら、非課税枠を設けましょうということですね。贈与税を抑えつつ相続税対策もできるというのは、願ったりかなったりですね。

1人につき1500万円まで非課税
「教育資金贈与の特例」

【元国税×金融マンが明かす】スイミングや体操教室も!?1人につき1500万円まで非課税「教育資金贈与の特例」で節税せよ

小林 富裕層に限らず一般の家庭でも、おじいちゃんやおばあちゃんが、「孫の教育費を出してあげたい」というケースは、昔からたくさんあります。そんなときに活用のしがいのあるのが「教育資金贈与の特例」です。

これは親や祖父母など「直系尊属」から子や孫に教育資金を贈与する場合、「子・孫1人につき1500万円まで非課税」とする特例です。

土屋 1人につき1500万円というは大きいですよね。贈与できるのは、1回きりなのですか?

小林 いいえ、1500万円という限度額内であれば、何度でも贈与を繰り返すことができます。なお、学校関係費だけでなく、スイミングスクールなどのスポーツ系の習い事や、ピアノ教室や絵画教室など、文化芸術系の習い事も対象とされています。

ただし限度額1500万円のうち、学校以外への支払いは500万円までしか認められていません。

教育資金贈与が有効なのは
子や孫が30歳になるまで

土屋 教育資金贈与の特例を利用するには、金融機関と贈与者が「教育資金管理契約」を結んで専用の口座を作り、お金を入れておく。そして、教育資金の支払いに充てたことがわかる領収書を金融機関に提示しないと非課税にならないので、他の目的への流用を防ぐことができますね。

小林 海外留学の予定の予定があったり、理系の学費の高い学部に進学予定があったりする場合、活用のしがいのある特例だと思います。ただし、贈与を受けた子や孫が30歳になると制度が終了することになっています。30歳になった時点で贈与されたお金が残っていると、贈与税がかかってしまいますので注意が必要です。

一度、贈与契約を締結して口座を作ってしまうと、使いきれないからという理由で他の用途に使うことはできないので、「確実に30歳までに使いきれる額の教育費」に限定するのが上手な活用法です。

※本稿は、『元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者』(ダイヤモンド社)と『お金以前』(日経BP)の著者による特別対談です。