銀行で“ゆるキャラ”増加だが戦略もゆるすぎ…取材に「うちにはいない」の珍回答もPhoto:PIXTA
*本記事はきんざいOnlineからの転載です。

 近年、ゆるキャラを採用する銀行が増えてきた。ゆるキャラの活用によって、親しみやすさを訴求できる効果や、ご当地キャラの共通利用による地域活性化が狙える。一方で、統合マーケティングコミュニケーション(IMC=Integrated Marketing Communication)の観点から戦略的にゆるキャラを採用している銀行は少なく、現状では課題も多い。本稿では、マーケティングの視点から銀行のゆるキャラ活用について論じたい。

銀行キャラの大半はゆるキャラに該当

 ゆるキャラは「ゆるいマスコットキャラクター」の略である。イラストレーターのみうらじゅん氏が命名し、2004年に出版社の扶桑社と共にゆるキャラという言葉を商標登録している。企業や地域などのシンボルとして広告宣伝や情報伝達のために使われており、癒しやのんびり感を与える風貌など「かわいい」ことを最大の特徴としている。07年に誕生した滋賀県彦根市の「ひこにゃん」がゆるキャラブームの火付け役となり、近年では熊本県の「くまモン」や、愛媛県今治市の「バリィさん」などのご当地キャラクターが人気を博している。

 ゆるキャラの最大の特徴である「かわいい」については、工学的な研究も進みつつある。芝浦工業大学の大倉典子教授の論文「感性価値としての『かわいい』」(15年)によれば、かわいいと感じるキャラクターは、形・色・質感に特徴があるという。すなわち、「直線より曲線」「明度と彩度が高く中間色」「触感として柔らかさやふわふわ感が想起されるテクスチャ」──などがかわいさの要素となる。

 銀行のキャラクターは、銀行独自で作成したケースもあれば、くまモンなどご当地キャラを使っているケースもある。また、アニメなどのキャラクターを、著作権使用料を支払った上で使用しているケースも見られる。筆者が見た限りだと、銀行独自のキャラクターのほとんどはゆるキャラの特徴を有しており、その多くはゆるキャラと呼んでも問題ないと思われる。