日韓の関係改善がエレクトロニクス産業で急務となる深い事情日韓の関係改善が進む中、これから両国が考えるべきエレクトロニクス産業での連携とは(写真はイメージです) Photo:PIXTA

日韓の関係改善ムードで考える
エレクトロニクス産業が進むべき道

 ロウソク学生運動を契機に発足した韓国の文在寅左派政権に変わり、保守派の尹錫悦政権は左派の反対をよそに日韓関係の改善を急いでいる。一方、わが国でも2019年にフッ化水素などの半導体原料について輸出管理を厳格化した結果、韓国を輸出手続きを簡略化する優遇措置から除外する、いわゆるホワイト国からの除外を行った。

 今月になって両国の局長級の政策対話を行って、韓国向けの輸出管理を解除し、韓国もWTOへの提訴を取り下げることで合意した。ここにきて、日韓両国はなぜ関係改善を急ぐのか。

 もちろん日韓は隣国であり、関係が良いことには越したことはない。しかしこの20年あまり、両国には突如として関係を悪化させる事態が度々生じてきた。

 日本は1965年に日韓基本条約を締結、また財産や請求権に関する取り決めを行い、戦後処理はすべて終わらせた。政府レベルだけでなく、経済活動においても、民間協力の形で日本の産業や企業は韓国を支援してきた。

 たとえば、その後韓国の主力産業に成長するエレクトロニクスや自動車において、サムスン電子にはNEC、ヒョンデ自動車には三菱自動車などが技術供与や支援を行い、官民を挙げて韓国の経済成長に協力をしてきた。2002年には日韓ワールドカップを共催したり、韓国で日本の音楽やドラマが解禁され、日本でも韓流ブームが起きたりと、両国の関係は一時雪解けの様相を示した。

 そこに水を差したのが、2000年代以降に突然浮上した従軍慰安婦問題や徴用工問題だ。さらに、これも近年になって突如として浮上した旭日旗問題など、韓国では一部の左派勢力の主張によって、日韓の協力関係は水を差されてきた。

 法的にはすでに解決しているこれらの問題に対し、韓国企業の多くも日本との経済関係を重視し、日韓関係の悪化を恐れてきた。また、韓国国内で声を大にして言うことははばかれたものの、日本企業と韓国企業は市場でのライバルであると共に協調する面では良好な関係を保つという、競争と協調と続けてきた。