日韓関係の先行きを楽観するのは早計

 ただ、尹政権の対日政策に関して、韓国の世論が納得し、賛同をしているわけでは必ずしもない。野党や市民団体などが尹政権の方針に反発を強め、日韓の関係修復が想定されたように進まないリスクはある。

 韓国国内の報道では、経済産業省が特定3品目の輸出管理の運用見直しを発表したことは評価された。一方、安全保障面での協力の重要性を認識しつつも、日本の態度には失望したといった指摘は多い。また、原告の一部は財団による賠償肩代わりに反発している。原告側が賠償を受け取らない可能性もある。その点に関して、尹政権のさらなる対応が待たれる。

 足元で、世界経済の先行き不透明感も一段と高まっている。それも、日韓の関係修復を阻害する思わぬ要因になりかねない。米国では、シリコンバレー銀行の破綻などをきっかけに、金融システムが不安定になることへの懸念が高まっている。欧州では、スイスの大手行であるクレディ・スイスがUBSに救済合併され、劣後債(弁済順位の低い債券)の一部は全損を被る。主要投資家のリスク回避心理は強まり、世界的に株価が下落する恐れが高まっている。

 一方、米欧の中央銀行はインフレ鎮静化のための利上げを継続し、金融システムの安定と景気の下落にも配慮する必要がある。また、韓国にとって最大の輸出先である、中国の景気持ち直しペースも緩慢だ。

 輸出依存度が高く、世界経済の変化に影響されやすい韓国経済の先行き懸念は高まるだろう。実際に韓国の雇用・所得環境が不安定化すれば、若年層を中心に閉塞感は高まり、尹政権の支持率はさらに低下するかもしれない。

 わが国はそうした展開を念頭に、対韓政策を進めるべきだ。まず、安倍晋三政権以降の冷静かつ毅然とした姿勢を堅持し、「過去の請求権問題は最終的に解決された」との理解を韓国や米国をはじめとする国際世論と共有すべきだ。

 一方、安全保障面では米国との信頼関係を強化し、民間レベルでの交流などは積極的に進める。その上で韓国世論の変化を確認しつつ、わが国は今後の輸出管理体制のさらなる見直しなどを進めることに努める必要がある。