20代と40代では
「柔軟性」が変わる

 私は20代の頃にも中小企業診断士の試験を受けたことがあります。グローバルコンサルティングファームの激務の傍らで、夜間に通信教育のテキストを読みながら試験の準備をしたのですが、20代前半の若さでそれなりにすらすらと知識は吸収できて、1年で試験に合格できました。

 その成功体験から、42歳で受けた米国公認会計士資格もだいたい同じペースでいけると考えていたのですが、そこが大間違いでした。あくまで個人の感想として言わせていただくと「20代の頃と違って40代になるとここまで学習能力が落ちるのか?」と弱音が出るほどに学習ペースが落ちていました。

 今思うとアンラーニング、つまりそれまで身に付けた考えをいったん捨てることが必要な科目が一番難しかったように思います。

 具体的には、監査プロセスを学習するのに難儀をしました。私の本業のコンサルティングでは、仮説を立てたらどんどん独自に動いてそれを素早く証明していく速さが求められます。一方で、監査プロセスは手順を守ってきちんと進めることが求められるので、仕事の基本姿勢がその点で違います。

 たとえば監査プロセスの試験で「不正の証拠と思われるファクトを発見したらどうしたらいいか?」という例題があります。私の経験で言えば「上司に相談する」とか「クライアントの事務局にまず報告する」といった選択肢が正しいように思うのですが、監査の試験だとそれは不正解なのです。

 この場合の正解は「まずその重要性について評価する」でした。監査法人の企業監査というものは、株主に対して企業価値を見誤るほどの重大な不正が起きていないことを確認する作業なので、それがどれくらい重大な話なのかをまず考えよということです。

 ニュアンスとしては、決算に影響を与えるほどの粉飾と思われる取引の証拠を見つけたのであれば問題として取り上げるべきだし、部長が交際費で処理した領収書の内容が怪しいぐらいの話であれば、現在進行中の監査プロセスを変更するほどの話ではないかもしれないという感覚です。こういったことを再学習するのに結構苦労したのです。