上原浩治氏にかけられた驚きの一言…元球児の社長が明かす「甲子園の経験」が生きたこと写真はイメージです Photo:PIXTA

高校野球の3年間とは何なのか。甲子園を目指して練習に明け暮れた経験は輝かしい思い出としてずっと残る。球児たちが得たのは野球の技術や思い出ばかりではない。いずれ社会に出る球児たちは、高校野球の経験を通じて、社会に出て通用する力を身につける。元メジャーリーガーの上原浩治氏や、現在メジャーリーグのカブスで活躍する鈴木誠也選手らが所属するスポーツマネジメント会社「株式会社スポーツバックス」の代表取締役社長・澤井芳信氏は、現在の社長業に高校野球生活で培った忍耐力、不条理な上下関係をなくしたこと、課題解決力などが活きていると語る。高校野球を経験してその後社長になった14人の「元球児」に取材した書籍・高校野球ドットコム編集部『人生で大切なことはすべて高校野球から教わった』(竹書房)から、一部を抜粋・編集して紹介する。

高校野球での「忍耐力」が
今に活きている

 改めて高校時代を振り返り、澤井さんは高校野球生活で培った「忍耐力」は現在の社長業、ひいてはビジネスマンとしても大きく活かされていると語気を強めて語る。

「高校野球は、甲子園というわかりやすい目標があって、甲子園出場が現実的でないチームでも『ベスト8進出』など明確な目標設定ができます。でも仕事は結果がわかりづらいので、努力の方向性に迷う元アスリートや元球児も多いのが現実です。甲子園以上のモチベーションを見つけるのはなかなか難しいので。でもそれは当たり前で、それをわかった上でやらないといけないし、仕事に対する目標も価値も人それぞれ違います。

 その中でどうやって自分の目標に近づくかを考えた時に、僕の場合は『忍耐』に集約されると考えています。高校野球をやっていると、自分に足りないものがわかりやすいので、目標に対して明確にアプローチできますが、仕事になるとそれが難しい。

 目標設定がまずすごく大事で、それを成し遂げるために大事なのは何かと言われると、結局『忍耐』になるんですよ。目標に向かうための努力やつらいことを乗り越えていくには、やっぱり高校野球の時に死ぬほど練習をやってきた経験が力になるのではないかと思います」

忍耐力の大切さは
勉強にも当てはまる

 現役の球児に置き換えると、これは野球だけではなく勉強にも当てはまる。澤井さんは、甲子園への練習がしたいがために勉強を頑張っていた。これは目標への手段として勉強を捉えていたということだ。

 もちろん、中には勉強そのものが大好きな学生もいるが、多くの選手が苦手であろう勉強から逃げないことで培われた「忍耐力」は、学生時代に身につけておくべきだと澤井さんは考えている。

「みんな嫌なことをしたくないのは当たり前ですが、スポーツを理由に勉強から逃げてほしくないんですよね。プロのアスリートとして生きていく人もいますが、多くの人はそこに当てはまりません。

 最低限の勉強はすべきだと鈴木誠也選手(広島東洋カープ)も言っています。あのレベルの選手でも言い切ることなので、絶対に勉強からは逃げないようにしないといけないですよね」