第7世代となった新型SLはもはやメルセデス・ベンツのSLですらない。他の乗用車ラインアップとの共通点も少ない。メルセデスAMGによる独自開発モデルとなったからだ。そしてなんと2+2の4シーターモデルとなり、ソフトトップオープンへと先祖帰りも果たした。要するにSLは全面刷新を遂げたのである。新型は、AMGブランドの一員となっただけでなく、乗用車ラインナップの2番手として、従来以上に広範囲のユーザーを狙ってモデルチェンジしたように感じられる。
ちなみにSLは歴代すべてが純2シーターと思われがちだが、2代目の“パゴダ”には3シーター仕様があったし、3代目のR107にはクローズドルーフの4シーターモデル、SLCが設定されていた。さらには4代目のR129にも欧州仕様に+2モデルが用意されたことがある。
新型は高効率2L直4ターボを搭載
走りは軽快&スポーティ。なかなかいい!
新型は“衝撃の7代目”というべきだろう。新たな一歩を踏み出したことは理解しているものの、“SLは最高のメルセデス”という思いが強い筆者は、ちょっと複雑な思いで7代目のステアリングを握った。走行ルートは東京都内から自宅の京都までの往復。都合1000km以上、その走りを味わった。
日本のSL43は、中間グレード。“43”ということは、つまり2Lの直4ターボ(M139型)を積んでいる。もちろん普及版というわけではなく、“1マン1モーター”にこだわったAMG謹製である。スペックはエンジン単体で381ps/480Nm、これにモーター(10kW/58Nm)を組み合わせて、マイルドHVシステムを構成。史上最強かつ最高の4気筒、との呼び声が高い。とはいえSLに4気筒エンジンは似合わないと思う方も多いだろう。欧州では2種類のV8グレード、63と55が用意されている。
スタイリングは、正統派のパーソナルスポーツ。従来のリトラクタブルハードトップをやめ、カラーコーディネーションが楽しめるソフトトップの復活はうれしい。2+2レイアウトは、日常面で大きなメリットがあることは911が証明している。
とはいえ実物を見ても、まだ少しワダカマリがあった。どこか威厳に欠けているように思える。ひと世代前のSLのようなギラギラした印象に乏しい。そこでふと思い直す。派手な出立ちは他に任せて、SLはもう少し上品に、オトナのためのオープンカーを目指したのではないか、と。そう思って見直せば、シンプルで滑らかなフォルムがカッコよく見えてきた!
乗ってみれば、これがけっこうスポーティな走りを見せるので驚いた。4気筒エンジンを積んだことで、“鼻先の軽さ”というメリットが生まれた。ノーズの軽快で鮮やかな動きは、まさに操るという感覚。重厚なクルーザー感には欠けるものの、それはV8を積む55や63の領域ということなのだろう。その昔、6気筒ユニットを積むベーシックなSLクラスに乗ると思いのほかファン・トゥ・ドライブであったことを思い出した。