「幸福」を3つの資本をもとに定義した前著『幸福の「資本」論』からパワーアップ。3つの資本に“合理性”の横軸を加味して、人生の成功について追求した橘玲氏の最新刊『シンプルで合理的な人生設計』が話題だ。“自由に生きるためには人生の土台を合理的に設計せよ”と語る著者・橘玲氏の人生設計論の一部をご紹介しよう!
よい選択とは、コスパとリスパを最適化すること
資源が有限であれば、当然のことながら、それをいかに有効に使うかが重要になる。これがコスパ=CP(コストパフォーマンス)で、同じ費用でできるだけ大きなリターン(利益)を得ることを目指す。
100円のコストで120円分のリターンが得られればコスパは20%、200円分のリターンならコスパ100%だ。このようにコスパは、リターンとコストの比率(リターン/コスト)でシンプルに表わすことができる。
これとよく似た指標に、(私の造語だが)リスパ=RP(リスクパフォーマンス)がある。「同じリスクならより大きなリターンがある方がいい」というルールで、これを逆にすると「同じリターンならリスクが小さい方がいい」になる。リスパを理解するには統計の知識が必要になる。
よい選択は、コスパだけでは測れない。小さなコストで大きなリターンを得られる可能性があっても、失敗したときのリスクがとてつもなく大きければ元も子もない(1万円を投資すれば99%の確率で100万円もらえるが、1%の確率で死んでしまうという賭けを考えてみよう)。
よい選択とは、コスパとリスパを最適化すること
なのだ。
コスパとリスパは、もともとはファイナンス理論の用語なので、金融資本(資産運用)を考えるときにもっとも有用だ。しかしこの原則は、人的資本(働いてお金を稼ぐ能力)や社会資本(人間関係)を考えるときにも意識しておく必要がある。
同じ仕事をするのであれば、給料/報酬が高い方がコスパがいい。同じ給料/報酬なら、安定していた方がリスパが高い。
だが人的資本の場合は、ここに「やりがい」や「自分らしさ」という心理的要素が加わる。報酬が低くてもやりがいのある仕事もあれば、報酬の高いブルシット・ジョブ(クソどうでもいい仕事)もあるだろう。
金融資本を扱うときのように、人的資本をファイナンス理論でクリアに論じることはできない。だがそれでも、資本からリターンが生まれる以上、コスパとリスパはやはり重要だ。
社会資本になると、そもそも金銭で数値化することができないので、コスパやリスパはより曖昧になる。それ以前に、愛情や友情を「コスト」で語ること自体を忌避するひとも多いだろう。
もちろん、子は親を選択することはできないし、親も子を(養子でないかぎり)選択できない。だが、恋人や友だちは「選択」できる。