東芝Photo:NurPhoto/gettyimages

東芝が日本産業パートナーズ(JIP)などの買収を受け入れる見込みだが、再建はこれからが本番だ。リストラの強化などいばらの道が続くことになるだろう。東芝経営陣に求められるのは、明確な成長戦略を示すこと、利害調整を円滑に進めることに他ならない。経済や安全保障の面で、東芝の重要性は一段と高まっている。東芝は産業界、社会の負託を受けている認識を持ち、構造改革を加速するべきだ。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

東芝買収に合意も、再建はいばらの道が続く

 3月23日、東芝は日本産業パートナーズ(JIP)などによる買収提案を受け入れると発表した。TOB(株式公開買い付け)の成立後、東芝の株式は非公開化される予定だ(7月下旬めど)。ただ、これで東芝の再建が一気に好転したと考えるのは早計だ。むしろ、JIPによる買収は、再建のスタートに立ったにすぎない。東芝にとってはこれからが本番であり、いばらの道が続くことになるだろう。

 東芝の買収(非公開化)に時間がかかったのには、多くの問題が山積していることがある。その問題は、東芝の内部と外部に分けて考えとわかりやすいだろう。

 内部要因の一つとして、1990年代の初頭以降、東芝は新しい事業を育成することが難しかった。近年は、一部株主との利害調整も難航した。外部要因としては、わが国の経済安全保障にとって東芝の重要性は高まっている。政府は、東芝の持つ先端技術が海外に流出しないように一段と注意を払ってきたはずだ。雇用維持に関する社会的な要請も大きいだろう。

 今後、買収の成立を経て東芝経営陣は、出資者である国内企業などとの利害調整を迅速に進めなければならない。そのために経営陣は、明確に成長が期待できる戦略を提示する必要がある。研究開発や設備投資のための資金を捻出するために、リストラも強化されるだろう。その上で東芝が競争力を発揮できるか否かが注目される。