新入社員の頃に読んでおくべきだったと、これほど悔しい気持ちになった本はない。NHK「おはよう日本」でも取り上げられ、新入社員のバイブルとして60万人以上のビジネスパーソンに読みつがれている『入社1年目の教科書』。多数の企業で新人研修のテキストとして採用されている「新社会人のためのガイドブック」だ。
ライフネット生命保険株式会社の共同創業者・岩瀬大輔氏の語る「50のルール」は、キャリアの長いベテラン社員や、指導する立場のマネージャー層にとっても発見の多いものばかりだ。本稿では、本書から得た学びとして、「入社1年目にやっておくべき経験」について、お届けする。(構成:川代紗生)

入社1年目の教科書Photo: Adobe Stock

「入社1年目にやるべきだった」後悔したことワースト1

 これは間違いなく、入社1年目で読んでおくべきだった。

 たしかにその通りだ。絶対にやっておくべきだった。読みながら、心の底から後悔した箇所があった。

『入社1年目の教科書』には、入社1年目に習得しておくべき「50のルール」が書かれている。

 その一つに、ルール40「幹事を引き受けることで、特権を手にできる」という言葉があった。著者であり、ライフネット生命保険株式会社の共同創業者・岩瀬大輔氏は、「幹事」をやるメリットについて、このように綴っている。

同期をまとめているのはいつも〇〇さんだな、宴会になるといつも〇〇さんが仕切っているな。そういう存在は、頼りがいがあるという印象を持たれます。幹事を引き受けることで生じる副産物として、周囲からの信頼を勝ち得ること、上司から信用される存在になること、段取り力が上がることが挙げられます。(P.171)

 つまり、社会人として未熟な新人が、他と差をつけるために有効な手段が、社内イベントや飲み会の「幹事」だというのだ。

入社1年目で大事なのは社内ブランディング

 いや、仕事に関係なく、給料が出るわけでもない幹事の役割など、間違いなく損だと思う人もいるかもしれない。

 筆者も若手社員の頃は、仕事に関係のないところで時間を取られたくないと思い、実際に、そういった役割はなるべく避けるようにしてきた。

 飲み会にもそれほど参加せず、社内の人たちと一定の距離を保つように心がけていた。そのおかげで、プライベートの時間を確保できたのも事実だ。

 しかし、『入社1年目の教科書』を読んであらためて感じたのは、「入社1年目」だからこそ、幹事くらいはやっておくべきだった、ということだった。

 本書には、こんな言葉がある。

若手はみんな荒削りです。当面のところ、仕事で差はつきません。信用できる人物か、仕事を任せられる人物か、一緒に仕事をしたい人物か。結局のところ、差がつくポイントはそこです。
そのときに大切なのは、自分のブランディングです。身だしなみはきちんとしているか。挨拶はしっかりしているか。言葉遣いは丁寧か。伝えたことをしっかり聞いてくれるか。(中略)ブランディングに必要なこれらの要素は、幹事を遂行するうえで必ず経験するものです。(P.171)

 そうなのだ。どれだけ偏差値の高い大学を出ていたからといって、どれだけ優秀な成績で卒業したからといって、社会に出てしまえばみんな同じ新人だ。スキルもなければ、経験もない。いきなり大きな仕事を任されるわけでもない。

 グッと成果の差が開いてくるのは、入社後ある程度時間が経ってからだろう。

 岩瀬氏は、さらにこう綴る。

上司や先輩は、あなたの仕事ぶりだけを見ているのではありません。イザというときに腹をくくれるか。一度やると決めたことをやり抜く人なのか。何事にも斜に構えず本気で向き合う人なのか。(P.177)

「人が嫌がること」をやる人のもとに、チャンスは訪れる

 入社1年目に定着した仕事習慣は、そのまま3年後、5年後、10年後にまで影響を及ぼすものだ。

 筆者は入社後、とにかく「コスパのいい働き方」にこだわり続けていた。

 その結果、周りからは腫れ物のように扱われるようになってしまった。「最低限のことしかやりません」という態度を貫いていたためか、周りの人たちとの間にも距離が生まれた。

 普通に仕事をしていたつもりが、結局、スタートダッシュに遅れ、同期たちがどんどん成果を出し、新しい役割を任される一方で、自分だけが何の実績もないまま1年目を終えることになってしまった。知らないあいだに、圧倒的な差が開いていたのだ。

 岩瀬氏の「チャンス」についての言葉が、深く胸に刺さる。

出世する人は、数多くのチャンスをもらっています。ところが、チャンスというのは楽なことばかりではありません。苦しいこと、辛いこと、面倒なことも当然含まれてきます。人が嫌がるようなことを積極的に引き受け、そのチャンスを死んでもやりきる人だけに、チャンスは再び訪れます。(P.172)

 仕事のスキルを自分の力でブラッシュアップし続けるのは当然だ。

 それに加え、チャンスとフィードバックを数多くもらうための努力ができる人ほど、誰よりも速く成長できるのだろう。

『入社1年目の教科書』の「50のルール」は、背中を押してくれるような言葉ばかりだ。ぜひ、多くの人の手に届いてほしい一冊である。