新入社員の頃に読んでおくべきだったと、これほど悔しい気持ちになった本はない。NHK「おはよう日本」でも取り上げられ、新入社員のバイブルとして60万人以上のビジネスパーソンに読みつがれている『入社1年目の教科書』。多数の企業で新人研修のテキストとして採用されている「新社会人のためのガイドブック」だ。
ライフネット生命保険株式会社の共同創業者・岩瀬大輔氏の語る「50のルール」は、キャリアの長いベテラン社員や、指導する立場のマネージャー層にとっても発見の多いものばかりだ。本稿では、本書から得た学びとして、「入社1年目にやっておくべき経験」について、お届けする。(構成:川代紗生)
「入社1年目にやるべきだった」後悔したことワースト1
これは間違いなく、入社1年目で読んでおくべきだった。
たしかにその通りだ。絶対にやっておくべきだった。読みながら、心の底から後悔した箇所があった。
『入社1年目の教科書』には、入社1年目に習得しておくべき「50のルール」が書かれている。
その一つに、ルール40「幹事を引き受けることで、特権を手にできる」という言葉があった。著者であり、ライフネット生命保険株式会社の共同創業者・岩瀬大輔氏は、「幹事」をやるメリットについて、このように綴っている。
つまり、社会人として未熟な新人が、他と差をつけるために有効な手段が、社内イベントや飲み会の「幹事」だというのだ。
入社1年目で大事なのは社内ブランディング
いや、仕事に関係なく、給料が出るわけでもない幹事の役割など、間違いなく損だと思う人もいるかもしれない。
筆者も若手社員の頃は、仕事に関係のないところで時間を取られたくないと思い、実際に、そういった役割はなるべく避けるようにしてきた。
飲み会にもそれほど参加せず、社内の人たちと一定の距離を保つように心がけていた。そのおかげで、プライベートの時間を確保できたのも事実だ。
しかし、『入社1年目の教科書』を読んであらためて感じたのは、「入社1年目」だからこそ、幹事くらいはやっておくべきだった、ということだった。
本書には、こんな言葉がある。
そのときに大切なのは、自分のブランディングです。身だしなみはきちんとしているか。挨拶はしっかりしているか。言葉遣いは丁寧か。伝えたことをしっかり聞いてくれるか。(中略)ブランディングに必要なこれらの要素は、幹事を遂行するうえで必ず経験するものです。(P.171)
そうなのだ。どれだけ偏差値の高い大学を出ていたからといって、どれだけ優秀な成績で卒業したからといって、社会に出てしまえばみんな同じ新人だ。スキルもなければ、経験もない。いきなり大きな仕事を任されるわけでもない。
グッと成果の差が開いてくるのは、入社後ある程度時間が経ってからだろう。
岩瀬氏は、さらにこう綴る。
「人が嫌がること」をやる人のもとに、チャンスは訪れる
入社1年目に定着した仕事習慣は、そのまま3年後、5年後、10年後にまで影響を及ぼすものだ。
筆者は入社後、とにかく「コスパのいい働き方」にこだわり続けていた。
その結果、周りからは腫れ物のように扱われるようになってしまった。「最低限のことしかやりません」という態度を貫いていたためか、周りの人たちとの間にも距離が生まれた。
普通に仕事をしていたつもりが、結局、スタートダッシュに遅れ、同期たちがどんどん成果を出し、新しい役割を任される一方で、自分だけが何の実績もないまま1年目を終えることになってしまった。知らないあいだに、圧倒的な差が開いていたのだ。
岩瀬氏の「チャンス」についての言葉が、深く胸に刺さる。
仕事のスキルを自分の力でブラッシュアップし続けるのは当然だ。
それに加え、チャンスとフィードバックを数多くもらうための努力ができる人ほど、誰よりも速く成長できるのだろう。
『入社1年目の教科書』の「50のルール」は、背中を押してくれるような言葉ばかりだ。ぜひ、多くの人の手に届いてほしい一冊である。