PTA恒例「専業主婦vs働く母」の激突で、双方が見落としている“呪縛”の正体写真はイメージです Photo:PIXTA

女性の社会進出が盛んになった今もなお、「PTAは母親がやって当然」という固定観念が色濃く残っている。だが、一くくりに母親と言っても、専業主婦もいれば働く母もいる。時代の変化の中で、いつしか両者は、PTAへの参加頻度や役員選びを巡って対立するようになった。短期集中連載「大塚さん、PTAが嫌すぎるんですが…」の最終回となる#6では、「ひとり親」として働きながら子どもを育ててきた筆者が、取材や私生活で見た対立の実態と、それらを踏まえて考えた解決策を語る。(ライター 大塚玲子)

時代の変化に伴って
PTA活動の「押し付け合い」も過熱

 本連載のラストとなる今回取り上げるのは、言及すると波紋を呼ぶPTAのデンジャラスゾーン「専業主婦vs働く母の対立」についてです。筆者がPTAの取材を始めた約10年前からあまり踏み込まないようにしてきたテーマですが、その理由も含めて、書いてみようかなと思います。

 初めに断っておくと、今の専業主婦の人たちが置かれた状況は、一昔前のそれとはずいぶん異なります。専業主婦自体も、もうかなり減っていますし、以前とは違い時間に余裕がある人はほとんどいません。親の介護や、病気の治療をしているなど、事情がある人も少なからずいます。

 完全に「専業」の主婦はもはや珍しく、はた目には専業主婦に近くても、短時間のパートで働いている人がほとんどです。置かれた状況も、当然一人ひとり異なります。

 それでも、この記事では数十年前からPTAで起きてきた母親間の対立にスポットを当てるため、あえて「専業主婦vs働く母の対立」という構図で両者のおおまかな傾向を語らせてもらいます。その点どうかご容赦のほどを。

 さて、ではまずPTAにおける「専業主婦vs働く母」の対立とは何か。簡単に言うと、立場が異なる母親間における、PTA活動の押し付け合いです。PTAから逃れようとする働く母と、PTAから逃れられない専業主婦の戦い、と言ってもいいかもしれません。

 もともとPTA活動は、専業主婦を前提としたものといえるでしょう。PTAの発祥の地であるアメリカでも、GHQの指示でこれを導入した日本でも、PTAができた当時、女性たちは結婚して子どもを持ったら家事育児に専念するのが当たり前とされていました。仕事を続ける選択肢が、基本的になかった時代です。

 そこでPTAも育児の一環として「当然、母親がやるもの」と思われてきたし、母親たちも「それが当たり前だ」と思ってきたのでした。

【次ページ以降】
・専業主婦の“怒り”の裏にある思い
・「PTAは母親のもの」という“呪縛”はなぜ生まれた?
・「元当事者」の筆者が提言する解決策