平日朝夕ラッシュ時間帯と
土休日の日中はほぼ満席

 JRと私鉄の競争が激しい近畿圏でも、大阪~京都間は特に激戦区だ。JR京都線(大阪駅~京都駅間)は所要時間約30分の新快速が15分間隔、阪急京都線(大阪梅田駅~京都河原町駅間)は所要時間43分の特急が10分間隔で運行。これに対し、カーブの多い京阪本線の特急は淀屋橋駅~三条駅間に50分を要する。

 運賃にしても京阪は430円で、JRの580円よりは安いが、阪急は410円でもっと安い。最安でも最速でもない京阪は分が悪いように思えるが、そこに500円を足してでもプレミアムカーを利用したいという人が多いのだ。

 京阪によればプレミアムカーの乗車率は平日朝夕ラッシュ時間帯と土休日の日中はほぼ満席で、終日で75%という数字を記録しているという。早朝から深夜まで、ラッシュと逆方向の運用もある中、8割近い利用というのは驚きとしか言えない。

 どんな人が利用しているのか。平日と土休日に分けて考えると、平日は通勤需要だ。国土交通省の2021年度混雑率調査から最混雑区間(ピーク1時間)の輸送人員を比較すると、JR京都線が2万8580人(各駅停車1万1890人、快速1万6690人)、阪急京都線が2万4950人なのに対し、京阪が2万9919人で最も多い。

 京阪にカーブが多いのは、歴史のある市街地が並ぶ淀川の南側を経由しているからだ。それは沿線人口が多く、通勤需要が大きいということであり、京阪は私鉄ではいち早く路線の複々線化を進めた事業者である。

 一方、土休日は観光客だ。京阪のもうひとつの特徴は、大阪、京都のアクセスの良さだ。大阪側のターミナル淀屋橋は地下鉄御堂筋線に接続し、キタとミナミのどちらにも行きやすい。京都側は市街地を縦断するため都心部や観光地へのアクセスが良い。JRや阪急を利用したところで、京都駅や烏丸駅で地下鉄に乗り換えるのなら運賃の優位性もある。

 そして観光客は速達性を重視しない。むしろプレミアムカーのような上質な空間を楽しめるなら、所要時間が多少長い方がお得感がある。移動そのものが旅を盛り上げるのである。