東京23区の21年の移動人口は
約1.5万人の“転出超過”に

 21年に入ると、年初の1月8日から2回目の緊急事態宣言が発出され(3月21日までの73日間)、次いで3回目(4月25日から6月20日までの57日間)、4回目(7月12日から9月30日までの81日間)と立て続けに緊急事態宣言が発出された。

 また、宣言期間の合間はまん延防止等重点措置がほとんどの期間発出されていたから(宣言期間との重複を含め179日間)、21年は年365日のうち合計252日間(年間日数の70%に相当)も宣言もしくは措置が発出されたことで、東京都への人口流入の動きも急激に鈍化することとなる。

 余談ながら、結果的にこれだけ大規模・長期間にわたる感染予防策を実施したことが、東京都のみならず日本の経済・社会に大きな打撃となったことは否めず、社会構造自体の変化を促したことも事実であるから、これら移動制限の実施については、近い将来、徹底的な検証が求められよう。

 また、これだけ国民に事実上の行動制限を求めていたなかで強行した五輪開催についても、(1年延期で膨らんだ巨額の赤字を含めて)コロナ禍とは全く相いれず、経済合理性および時期の選択を誤ったものであったと指摘せざるを得ない。

 コロナ禍に突入して2年目の21年3月の東京都の移動人口は2万7803人、東京23区でも2万273人の転入超過を記録した。コロナ禍でも新年度を迎えるに当たって確実に人口増が発生するのは大都市であることの強みではある。だが、移動人口は転入超過とはいえ、東京都で対前年比は▲30.8%、東京23区でも▲37.1%となり、流入する人口のさらなる縮小によって、主に賃貸市場での変化もこの頃から顕著になっている。

 すなわち、単身者向けワンルームタイプの物件賃料の市場賃料(LIFULL HOME’Sに掲載される物件のエリアごとの平均賃料)はここ数年わずかながら上昇基調で推移しているが、反響賃料(賃貸ユーザーが問い合わせた物件のエリアごとの平均賃料)は弱含む傾向にある。

 首都圏平均を例に取ると、コロナ禍発生直後の20年初頭に7.4万円台だった市場賃料は、3年後の23年1月に7.7万円台へと約4%緩やかに上昇している。

 一方、この間の反響賃料は多少上下を繰り返しながらおおむね7.2万円前後で横ばい推移しており、特に消費者物価が上昇し始めた22年前半以降は7.4万円台から7.2万円台へと下落し、市場賃料と反響賃料の乖離率は5%以上に拡大している。

 マーケットの賃料推移だけでなく、22年以降は、都心のワンルームに空室が目立ち始め、フリーレント期間の設定や入居者への家電・家具のプレゼントといった付加価値の提供がないとなかなか空室が埋まらないとの話もよく耳にするようになった。

 結果的に21年の移動人口は、東京都で5433人(対前年比▲82.5%)、東京23区に至っては▲1万4828人と、年間を通じての転出超過となり、対前年比では▲185.8%という急減を記録した。全国23の政令市および特別区では最下位である。