みずほ銀行のシステムトラブルは、中から見て本質的には何が問題だったのか、そしてトラブルを乗り越えた今、新システムはみずほにどう役立つのか?『企業・銀行・官公庁・ITベンダー・コンサルが大騒ぎ! ヤバいDX 2023』(全13回)の#4は、トラブルの渦中にいた元・みずほの中の人をゲストに迎えたIT座談会の2回目です。(聞き手/ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)
Henry @HighWiz 大手SIerの大規模プロジェクトのPMを経て総合コンサルへ転身
ケビン松永 @Canary_Kun 大手SIerから独立してフリーのITコンサルやってます
よんてんごP @yontengoP ブラックIT業界を渡り歩く病人ツイッタラー。薬を飲み忘れる
むぎSE @MUGI1208 社内SE社畜ツイッタラー。炎上プロジェクトの遭遇率が高め
shin @shin_ofshins ウェブとアプリに詳しいコード書く系スタートアップ経営者
かち @kachi_saas SaaSの最新トレンド(リストラ)を身近に感じる外資ITソフトベンダーのセールスエンジニア
SW @Diamond_IT_SW コンサルからメーカー情シスに移籍した企業哀戦士
木公川 元金融SE畑むぎ大先生により臨時召喚されたみずほIT部SEマン。脱出済
「システム切り替えしたら
誰も知らない商品が出てきた」
――さて、今回もみずほ銀行の新勘定系システム「MINORI」への切り替えの際に起こったトラブルの話が続きます。2021年の座談会ではメンバー間でも「障害発生の6時間後の夜の3時に会議をして切り替え手順を新たに決定して実行」という対応に高い評価がありました。「何度もトラブっているだけに、さすが対応が手慣れている、『事故は未然に防げなかったけど、患者が死にかけてから最速で蘇生させられました』みたいな話」と話題になりました。
木公川 5回目の8月19~20日の全営業店窓口システム停止のやつですよね。
DB(データベース)サーバーが停止し、(※1)RAIDミラーにも失敗し、待機系への自動切り替えも失敗してしまったという。本番系・待機系も復旧失敗したので、災害用の別DC(データセンター)で暫定稼働したやつでした。
あれは(※2)みずほ情報総研(現みずほリサーチ&テクノロジーズ)とかが、何もない状態から半日で検討を終え、手順書を作って災害系へ切り替えたんですけど、あの一連の動き自体は、個人的にはすごく評価しています。本番系を、DCを跨いで災害系DCと接続して稼働とか、普通は思い付かない。びっくりです。
SW 手順のレビューが適切に行われていたかは気になっちゃいますね。
木公川 あと、MINORIに切り替えたときに内部で起こった小話としては、「誰も知らない商品が出てきた」とかの面白事象かな。稟議の履歴を追うと全国の顧客でも数人しか持っていないすげえ昔のレア商品だったことが判明して。
よんてんごP(4.5P) あるある、システム更改したら、誰も知らない製品やら資料とかが出現するパターン。
木公川 それから、MINORI切り替えの利用者への悪影響としては、システムトラブル以外では週末にATMを何度も利用停止にして移行をしたことがとても大きいですが、実はまだあって。
(※3)全銀システムが18年10月から稼働時間を拡大して、他行への振り込みが24時間365日可能になったんですが、このサービスへの参加がみずほは遅れちゃったんですね。他のメガバンクは夜間振り込みできるのに、みずほからだけできないという。
かち すぐにできるようにしなかったのは何か固有の理由があったんですかね?
木公川 そのときは開発が2017年下期に終わったばかりのMINORIが、テストフェーズにあったんですよ。そこで新たな要件・開発を入れられなかった。しかも(合併前の旧)みずほ銀行(BK)の勘定系「STEPS」がMINORIに移行する18年9月~19年2月の移行期間ど真ん中だったし、この状態で新サービス対応は無理、怖過ぎます(笑)
むぎSE なるほど。これは納得感しかない。
ケビン松永(ケビン) ところで、そもそもの話なんですが、銀行ってシステム作ったからといって超もうかる、ってことはないですよね。みずほに限らずMUFG(三菱UFJ銀行)とかもすごい大金かけてシステム作ってすごい金額減損したりしてますけど、支店を閉鎖したりビジネスもかなり変わってる中で、MINORIでどれだけ今後挽回できるのかな、って思ったんですが。
さまざまなトラブルを経て稼働したみずほ銀行のMINORI。あのトラブルの根本にあった経営問題とは。そして今後は一体どうなるのか?今回も中にいた人だからこそ言える、重い内容が次々と……。