「グーグルにおけるサウナに関する検索数を調べると、近年ずっと右肩上がりだった検索数が昨年末から下がり始めています。これをひとつの指標とみれば、現在がブームのほぼピークとなる可能性もあります。とはいえ、今回のブームでサウナや温浴施設に行くことが習慣化した若い層は少なからずおり、彼らはブーム後も施設を訪れるでしょう」

 では、温浴業界に寄与するためにそうした愛好家ができることはなんなのか。

「できることはかなり少ないですが、やはり施設に足を運ぶことでしょうね。施設を利用するだけではなく、ジュースでもタオルでもいいから買うことでお金を落とすことでしょう。クラウドファンディングでリニューアル資金を集めたり、投資家を探してきたりなどが一番有効なのですが、それはなかなか難しいですからね」

 ただ、銭湯やサウナ施設以上に、太田氏が危惧している施設がある。それは全国の自治体にある温泉施設だ。

「1988年から始まったふるさと創生事業により、多くの自治体で温泉施設ができましたが、今はほとんどが赤字で、延々と税金で補填している状態です。民間に売却できるところはまだいいですが、それができない施設は運営をやめるしかありません。しかし、地元住民にとっては『おらが町の温泉』なわけで、反対意見も多く、票が欲しい首長は閉鎖に踏み切れません。人口減とコスト高により、地元住民がいくら訪れようと赤字を脱することはほぼ不可能な施設も多いです。そんな施設が全国に山ほどあることはあまり知られておらず、行政も放置しているのは大きな問題です」

 さまざまな課題を抱える温浴業界。「ととのえる」施設がいつまでもあるとは限らない。