女性の可能性を広げ、社会の可能性を広げる

――「共創」において、特に女性の資質に期待しているところはありますか。

 大いにあります。そもそも「立場の壁を越える」のは女子の得意技で、何か一つ共感できるキーワードを見つけると、どんな異質なメンバーともワーッと盛り上がることができる。グループワークの雰囲気が非常に良く、互いのいいところを見つけ合おうという空気が自然に生まれます。彼女たちは、同じ空間を共有するとき、あらゆる対立のスイッチをオフにできるんですね。

――彼女たちが社会に出れば、共創の場は広がっていきますね。

 はい。しかし、女性が社会に出ると、結婚、出産、子育て、介護と、キャリアを折られるタイミングに何度も遭遇することになります。本学科の「ライフマネジメント教育」は、それでも折れない強い心を育てるためのものです。ただし、ここには実は「裏コンセプト」があります。というのは、企業や社会側の意識や環境も変えていきたい、という思いです。女子学生と共に産学連携プロジェクトに取り組む企業を増やして、彼女たちの強さや発想の豊かさをもっと知ってもらいたいし、女性に対する企業の意識を変え、組織の中枢で活躍する女性を増やしたい。

 私は男女雇用機会均等法施行前に就職したので、男性社会で女性が働く不条理に何度もぶち当たりました。社会に出た教え子たちの近況を聞くと、残念ながら、それは必ずしも過去の話ではありません。多様性とかSDGsという言葉がこれだけ普及しても、女性の社会的地位は低いまま。この現状をなんとか打開したいと強く思っています。

絵を描くだけじゃない!伝統の「女子美」で学ぶ、共創のデザインPhoto by ASAMI MAKURA

――拡張したデザイン教育で女性の可能性を広げるとともに、社会の可能性も広げていくということですね。

 デザインを学んだからといってデザイナーにしかなれないわけじゃないし、逆に言えば、どんな肩書を付けて働くにしても、学んだ経験は必ず生かすことができます。4年間、デザイン、ビジネス、テクノロジーを横断しながら実践的に、主体的に学ぶことで、その積み重ねの結果としての「自分」になれる。それを社会の中でフル活用させて、オリジナルのポジションを築ける女性を育んでいきたいと思っています。