見たくなくても入ってきてしまう情報にめいる人多数

 この人生相談は、ネット上で広くシェアされ、相談者に同情する声が非常に多い。

 一昔前までは「いじめられる側にも責任がある」という言説が見られることもあったが、最近の特にネット上では、いじめは100%加害者が悪いという意見が多数派を占めているように見える。特に過去のいじめ経験を語る芸能人らに対して、批判的・懐疑的な言葉はほとんど見ない。

 逆に、過去にいじめ加害を面白おかしく語ってしまった過去のある芸能人への批判は大きい。

 こういった事情に加えて、今回の場合は相談者によれば、いじめっ子が華やかな世界で大成功し、さらには「メディアにも登場している」という。

 知りたくない現実を突きつけられてしまう相談者に同情する人が多いのは、多かれ少なかれ似たような思いをした経験のある人が少なくないからではないか。

 子ども時代のいじめでなくても、たとえば「体罰で有名だった教師が何事もなかったかのように教育者として講演している」とか「セクハラ上司が出世し、しかも会社のコンプライアンス担当になっている」といったケースは容易に想像できる。

 さらに、現代は情報過多の時代であり、雑誌を買わなくてもネット上で無料で見ることができるニュースは多い。また今回の相談者のように、相手がメディアに登場していなかったとしても、SNSを通じて、知りたくない相手の「今」を知ってしまうことはあるだろう。筆者も、SNSの「もしかして友達かも?」欄に、再会したいと思っていない昔の知り合いが突然表示され、思わず動悸が激しくなることがある。

 少し周囲に聞いてみても、このような思いをしている人は少なくない。

「陰口をたたかれたことをきっかけに疎遠になっていた友人が、Facebookの共通の友人のコメント欄に書き込んでいて、それが和やかで楽しそうな内容だったこともあり、見ただけで暗い気持ちになってしまったことがある」(30代女性)

「直接自分が被害を受けたわけではないが、クラスの雰囲気をかなり悪くしていたいじめっ子が、それなりに再生回数の多い動画配信者になっていた。たまにシェアされていたり、ネットのニュースで名前が出ているのを見るたびに嫌な気持ちになる」(20代男性)

「昔、クラスの中で女王様みたいだった同級生が、主婦系インスタグラマーをやっている。そこまで有名なわけではないですが、現在のおしゃれな暮らしが垣間見えてしまってモヤモヤする」(40代女性)

 中には「小学校時代、いじめの首謀者だった男子やその周辺の取り巻きが何をしているかをSNSで調べたことがある。彼らの中の何人かは、今は労働環境の良くない企業で働いていたりしているように見えた。因果応報だ、いい気味だと思ってしまった」(40代男性)という話もあるが、こういうケースの方がまれなのかもしれない。