給与収入だけで老後資金をまかなえるのか不安に思う人が増えている。多くの人にとって「投資」が避けて通れない時代になってきた。資産を増やすという点で大きな選択肢の1つになるのが株式投資だ。「株投資をはじめたいけど、どうしたらいいのか?」。そんな方に参考になる書籍『株の投資大全――成長株をどう見極め、いつ買ったらいいのか』(小泉秀希著、ひふみ株式戦略部監修)が3月15日に発刊された。「ひふみ投信」の創始者、藤野英人氏率いる投資のプロ集団「ひふみ株式戦略部」が全面監修した初の本。株で資産をつくるためには、何をどうすればいいのか? 本連載では、特別に本書から一部を抜粋・編集してその要旨をお伝えしていく。

PERで注意するべき2つのパターン――(2)低PERのバリュートラップPhoto: Adobe Stock

バリュートラップ(割安さに隠れた罠)
MIXI(2121)の場合

 バリュートラップというのは「割安さに隠れた罠」という意味であり、割安になっている背景には危険が潜んでいる可能性があることを示す言葉です。

 MIXI(ミクシィ)の2019年3月の例を見てみましょう(下図)。

 ミクシィは2013年から2016年にかけてスマホ用ゲーム「モンスターストライク」が爆発的にヒットして、業績と株価を飛躍的に伸ばしました。しかし、その後は徐々に業績が下降線をたどるようになり、株価も下降トレンドを描いていきました。

 そして、2019年3月の時点では、株価がピークから半値以下に落ち、PERが8倍にまで低下しました。一見、かなり割安で魅力的な株価水準にも思われるところでした。

 しかし、その割安さにつられて株を買うには危険な状況でした。実際、株価はそこからさらに半値にまで落ち込んでいったのです。

 ミクシィの株価がさらに下落したのは、利益が3分の1へと激減してしまったからです。この事例からもわかるように、PERが低いというだけでは、その株がお買い得であるとは言えません。PERが低い場合には、「どうしてPERが低いのか」を考える必要があります。

 そして、業績が大きく悪化していく可能性があると考えられるのなら、PERが低くてもその株への投資を避けたほうがいいでしょう。

 しかし、その会社の将来性が明るいと思われるのに、相場全体が低迷していることにつられて割安になっているとか、時価総額が小さくて目立たないために割安に放置されているだけだと判断できるなら、それは絶好の買いチャンスとなります。

小泉秀希(こいずみ・ひでき)
株式・金融ライター
東京大学卒業後、日興證券(現在のSMBC日興証券)などを経て、1999年より株式・金融ライターに。マネー雑誌『ダイヤモンドZAi』には創刊時から携わり、特集記事や「名投資家に学ぶ株の鉄則!」などの連載を長年担当。『たった7日で株とチャートの達人になる!』『めちゃくちゃ売れてる株の雑誌ザイが作った「株」入門』ほか、株式投資関連の書籍の執筆・編集を多数手がけ、その累計部数は100万部以上に。また、自らも個人投資家として熱心に投資に取り組んでいる。市民講座や社会人向けの株式投資講座などでの講演も多数。
ひふみ株式戦略部
投資信託ひふみシリーズのファンド運用を担うレオス・キャピタルワークスのメンバーにより構成された本書監修プロジェクトチーム。
ひふみ投信:https://hifumi.rheos.jp/